史生

史生（ししょう）

史生とは、日本の律令制度において、四等官という官位の下に置かれた職員のことです。各官司における書記官としての役割を担い、公文書の作成を通じて行政実務を支えました。

概要

史生の起源は、古代の「史（ふひと）」という職に遡ると考えられています。彼らは書算や法令に精通しており、式部省によって選ばれ、各官司に配属されました。史生の選任は、才能のある人材を登用し、行政能力を高めることを目的としていました。

史生は、内分番と呼ばれる交替勤務制度を通じて昇進しました。一定期間ごとに勤務評価が行われ、その結果に基づいて叙位が与えられました。この評価制度は、史生の能力向上とモチベーション維持に貢献しました。

官司ごとに史生の定員は定められており、庸・調・雑徭といった税の免除という待遇が与えられました。特に大宰府や諸国の史生には、公廨田（後に職分田）6段と、それを耕作する人員2名が支給されました。これにより、史生は安定した生活を送りながら職務に専念することができました。

当初、史生は太政官・八省・大宰府・国府といった主要な官司にのみ配置されていました。しかし、8世紀に入ると事務処理量の増加に伴い、神祇官などこれまで史生が配置されていなかった官司にも置かれるようになりました。9世紀前期には、ほとんどすべての官司に史生が配置されるようになり、律令国家の行政機構において不可欠な存在となりました。

史生の役割と変遷

史生の主な職務は、公文書の作成です。彼らは、各官司における決定事項や報告内容を文書にまとめ、四等官の署名を得ることで、公文書としての効力を持たせました。また、史生は、過去の文書や記録を整理・保管し、必要に応じて参照できるようにすることも重要な役割でした。

時代が下るにつれて、史生の役割も変化していきました。律令制度が形骸化していく中で、史生は、単なる書記官としての役割を超え、官司の実務を取り仕切る存在となっていきました。彼らは、行政判断のサポートや、官司間の連絡調整など、より高度な業務を担当するようになり、官司運営において中心的な役割を担うようになりました。

参考文献

野村忠夫「史生」（『国史大辞典 6』吉川弘文館、1985年）
木本好信「史生」（『平安時代史事典』角川書店、1994年）
* 早川庄八「史生」（『日本史大事典 3』平凡社、1993年）

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