雑徭

雑徭（ぞうよう、ざつよう）とは

雑徭は、古代中国および日本の律令制において、人民に課せられた労役による税の一種です。この制度は、国家が公共事業やその他の必要に応じて人民を動員するもので、現代の税制とは異なる独特の形態を持っていました。

日本における雑徭

日本の雑徭は、中国の制度を参考に導入されましたが、日本の実情に合わせて独自の発展を遂げました。

制度の導入と変遷

導入: 692年（持統天皇6年）に『飛鳥浄御原令』で初めて規定されたとされています。
対象者: 当初は、正丁（21歳から60歳の男性）が年間60日以内、次丁（正丁の障害者と老丁（61歳以上の男性））が年間30日以内、中男（17歳から20歳の男性）が年間15日以内と定められていました。
負担軽減: 757年（天平宝字元年）に雑徭は一時的に半減されました。その後、藤原仲麻呂の死によって一時的に元の制度に戻りましたが、796年（延暦14年）に再度半減されました。

実施内容

雑徭は、主に地方の国司によって徴発・編成され、治水灌漑工事、道路建設、国衙の修築などの公共事業に用いられました。公民には食料が支給されないのが原則で、これが大きな負担となりました。

問題点

国司の中には、私的な目的で雑徭を課す者もおり、農民の没落や逃亡を招く要因の一つとなりました。雑徭の負担は農民にとって非常に重く、社会不安の一因にもなりました。

実例

推古天皇26年（618年）には、安芸国で大型船を建造するために、農民が徴発されました。この際、全長20m、幅7mほどの船を半年余りで完成させるという過酷な労働が課せられました。

中国における雑徭

中国の雑徭は、北魏に始まり唐の時代に完成したとされています。唐代では、地方官庁が人民を徴発していました。

制度の詳細

中国の雑徭については不明な点が多く、租庸調と並ぶ基本的な税目であったとする説と、労役は租庸調とは別の差科（職役など）が中心であり、雑徭はその補完に過ぎないとする説があります。また、負担についても、義務であったとする説と、臨時の税であり賦課されない場合もあったとする説があります。

庸との関係

庸は本来年間20日の労役義務でしたが、40日の雑徭を課すことで庸が免除される場合もありました。また、庸を布で納めた場合には、労役1日分の代替と同時に雑徭も2日分が免除されるなど、庸の労役と雑徭は密接に関連していました。

まとめ

雑徭は、古代の社会において重要な役割を果たした労役税制度であり、国家の維持に不可欠なものでした。しかし、その負担は人民、特に農民にとって大きな重圧となり、社会的な問題を引き起こす要因ともなりました。この制度を通じて、古代の人々の生活や社会構造を垣間見ることができます。

参考資料

『雑徭』 - コトバンク

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