右派セクター・ウクライナ義勇軍団

ウクライナ義勇軍団（DUK）の解説

ウクライナ義勇軍団（ДУК ПС）は、極右民族主義政党「右派セクター」の準軍事組織として、2014年7月17日に設立されました。当初は、親ロシア派分離主義勢力への対抗手段として、義勇兵大隊の一つとして創設されました。この組織は、ウクライナ国民だけでなく、海外のウクライナ人やウクライナ民族主義のイデオロギーを共有する外国人など、自発的な参加者で構成されていました。

創設の背景

DUKの起源は、ユーロマイダン革命中に結成された自警団に遡ります。ヤヌコーヴィチ政権崩壊後、街の治安維持のために、右派セクターのメンバーが街頭パトロールを行っていました。その後、ドンバス戦争の勃発を受け、正規軍の準備不足を補うため、多くの義勇兵大隊が結成されました。当初、右派セクターのメンバーは「ドニプロ-2」大隊を組織しようとしましたが、内務省に登録を拒否され、独自の義勇兵大隊としてDUKを設立しました。

戦闘と歴史

DUKは、ドンバス戦争で前線に派遣され、アヴディーイウカやクラスノホリフカの奪還作戦に参加しました。また、ドネツク空港の戦いでは、ウクライナ軍とともに激しい戦闘を繰り広げました。しかし、2015年には、ウクライナの特殊治安部隊との衝突事件も発生しました。

2015年9月には、クリミア・タタール人組織と協力してクリミア封鎖に参加し、ロシア支配下のクリミアへの交通を妨害しました。2022年のロシアによるウクライナ侵攻では、再び動員され、チェルニーヒウやキーウの防衛戦、マリウポリ包囲戦などで戦いました。その後、DUKは特殊作戦センターとして正式にウクライナ陸軍に編入されました。

組織と特徴

初代司令官は右派セクターの指導者であったドミトリー・ヤロシで、後に「ウクライナ義勇軍」（UDA）を創設しました。DUKは当初、内務省や国防省に属さず、独立して活動していました。そのため、武器は鹵獲品や自費調達に頼らざるを得ない状況でした。しかし、2022年のロシアによるウクライナ侵攻以降、DUKはウクライナ陸軍の指揮下に入り、より組織的な活動が可能になりました。それでも、部隊内には独自の文化や民主的な雰囲気があり、兵士たちは指揮官と命令について自由に議論し、提案することができたとされています。

DUKは、多くのウクライナ義勇兵大隊や領土防衛大隊とは異なり、内務省にも国防省にも属していませんでした。そのため、政府からの武器供給が少なく、弾薬のみの供給に留まり、鹵獲した装備や自費調達に頼らざるを得ない状況でした。しかし、ウクライナ当局とは協力しており、過去には特定の命令を拒否すると宣言し、ミンスク停戦合意を尊重しつつ、ウクライナ国軍の停戦命令には従わない権利と、独自の計画に従って積極的な敵対行為を継続する権利を留保していました。

組織の統合と変化

2015年、DUKの完全なウクライナ陸軍への統合計画が持ち上がりましたが、DUKは軍への参加を拒否しました。しかし、2022年のロシア侵攻に伴い、特殊作戦センターとしてウクライナ陸軍に正式に編入され、より体系的な指揮系統下で活動するようになりました。この編入により、資材や装備の利用は改善されましたが、DUKの内部指揮系統や自由な雰囲気は維持されたとされています。

多様な構成員

DUKは外国人採用も認めており、反ロシアのチェチェン人イスラム教徒で構成されたシェイク・マンスール大隊や、反ルカシェンコ派のベラルーシ人で構成された戦術グループ「ベラルーシ」などの大隊を擁していました。また、DUKは超国家主義的な側面を持ちながらも、クリミア・タタール人、チェチェン人、ユダヤ人、ポーランド人、ハンガリー人、ギリシャ人、ロマなどの少数民族の包摂を認めていました。

現在の状況

2022年11月、ウクライナ義勇軍団は第67独立機械化旅団「DUK」に改編され、イギリスで訓練を受けました。現在も、ウクライナの防衛に重要な役割を果たしています。

DUKの歴史は、ウクライナの紛争における複雑な要素を映し出しています。その活動は、愛国心、民族主義、そして政治的な対立が絡み合った複雑な背景の中で理解されるべきです。

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