右派セクター

右派セクター

右派セクター（ウクライナ語: Правий сектор、英語: Pravy/Pravyi sektor）は、ウクライナの民族主義者を中心に構成される極右政治団体、政党、そして準軍事組織です。ロシアに対して強硬な対抗姿勢を取ることで知られています。創設者はドミトリー・ヤロシであり、現在はアンドレイ・タラセンコが代表を務めています。

歴史

2013年11月、極右団体トライデントのリーダーであったドミトリー・ヤロシが中心となり、ウクライナ国内の複数の極右組織を統合して設立されました。この組織は、第二次世界大戦中にソ連に対して抵抗運動を行ったウクライナ蜂起軍の伝統を受け継いでおり、ステパーン・バンデーラを象徴的な人物としています。また、北米を中心とした海外のウクライナ系移民からの支援も受けています。2014年3月22日には、トライデント、ウクライナ民族会議 ― ウクライナ人民の自己防衛、ウクライナの愛国者、ウクライナ国民会議、ホワイトハンマーといった極右民族主義団体が合併し、新たな政党として再編されました。

2014年ウクライナ騒乱と暫定政権への参加

2014年のウクライナ騒乱では、反ヤヌコーヴィチ政権デモの中心的な役割を果たしました。キエフの独立広場（ユーロマイダン）などで展開されたデモでは、警察との間で激しい衝突が発生し、騒乱の原動力となりました。ヤヌコーヴィチ政権の崩壊後、党首のドミトリー・ヤロシはヤツェニュク暫定政権への入閣や、ウクライナ国家安全保障・国防会議の副議長への就任を打診されましたが、閣内の反対や本人の辞退により、これは実現しませんでした。しかし、前身の極右団体トライデントのメンバーであったシェルヒー・クヴィットは、教育科学大臣として暫定政権に入閣しています。

2014年3月上旬、ヤロシが北カフカスのイスラム系反政府指導者ドク・ウマロフとの連携を模索する動きを見せたことで、ロシアはヤロシをテロ実行を呼びかけた罪などで起訴し、国際刑事警察機構に国際手配を要請しました。しかし、ウクライナ側はヤロシを逮捕し、他国に引き渡す根拠はないとしました。

2014年3月11日、右派セクターの主要人物であり、ウクライナ民族会議 ― ウクライナ人民の自己防衛のメンバーでもあったオレクサンドル・ムズィチコが西ウクライナのリウネで射殺されました。この事件を機に、暫定政権は右派セクターに対するそれまでの擁護姿勢を転換し、取り締まりの対象とするようになりました。

3月22日、右派セクターは複数の極右民族主義団体とともに新政党を創設し、5月に予定されていた大統領選挙にヤロシを擁立することを発表しました。しかし、新政権内部でも右派セクターの過激な活動を危惧する声が上がり、国民からの支持は低迷し、3月の世論調査では支持率は1%未満でした。

4月以降、暫定政権によって設立された国家親衛隊の志願兵として、ウクライナ東部での親露派鎮圧を目的として、活動拠点をキエフから東部のドニプロペトロウシクに移しました。

2015年末には、新組織設立の準備のため、創設者で党首のドミトリー・ヤロシが右派セクターを脱退。2016年3月19日には、アンドレイ・タラセンコがヤロシの後任として代表に就任しました。

主義・主張

右派セクターは、国民国家の樹立を目標としています。ドミトリー・ヤロシによると、国会に議席を持つ全ウクライナ連合「自由」（スヴォボーダ）との共通点が多いとされています。また、同性愛に反対する立場を表明しています。

武装組織

右派セクターは、準軍事組織「ウクライナ義勇軍団」を保有しています。ユーロマイダンの終結時には、内務省が所有する西ウクライナのリヴィウの武器庫を使用しました。

構成組織

トライデント: ドミトリー・ヤロシがリーダーを務める右派セクターの主要構成組織。メンバーのシェルヒー・クビットは教育科学大臣としてヤツェニュク暫定政権に入閣しました。
ウクライナ民族会議 ― ウクライナ人民の自己防衛: 殺害されたオレクサンドル・ムズィチコやジャーナリストのタチアナ・チョルノヴィルがメンバーとして所属していました。
ウクライナの愛国者: 西ウクライナのリヴィウ発祥ですが、現在は親ロシア派が多い東部のハルキウに拠点を置く極右反露の国家社会主義組織です。
ウクライナ国民会議
ホワイトハンマー

関連項目

全ウクライナ連合「自由」（スヴォボーダ）
スプリーナ・スプラーヴァ
ウクライナ民族主義議会
オレーナ・ビロゼルスカ

外部リンク

右派セクターのVK公式サイト
official site (in Ukrainian)
official site (English version)
* Briefing No. 27 .pdf Ukraine’s volunteer battalions – advantages and challenge article by Margaret Klein for Swedish Defence Research Agency

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