司馬攸

司馬攸（しば ゆう）

司馬攸（246年 - 283年）は、西晋の皇族であり、字は大猷、小字は桃符、諡は献。司馬昭の三男として生まれ、初代皇帝・司馬炎の同母弟にあたります。その聡明さと人望から、兄に次ぐ後継者候補として期待されましたが、志半ばで38歳という若さで亡くなりました。

生涯

幼い頃から聡明で、司馬懿に「大器である」と将来を嘱望され、父・司馬昭からも深く愛されて育ちました。司馬師の養子となりますが、司馬師の死を深く悲しみ、その孝行ぶりに人々は心を打たれたといいます。

成人した司馬攸は、物静かで穏やかな人柄で、賢者を敬い、人々を慈しみました。また、学問を愛し、文章にも優れていました。その才能と人望は、兄の司馬炎を凌ぐほどだったと伝えられています。

264年、父・司馬昭が晋王となると、後継者として司馬攸を選ぶ声も上がりました。しかし、長幼の序を重んじる重臣たちの反対により、実現には至りませんでした。司馬昭は「大業は司馬師の跡継ぎである司馬攸に返すべき」と述べたとされています。

265年、司馬昭が病死すると、司馬炎が晋王を継ぎ、後に皇帝として即位。司馬攸は斉王に封じられました。領国へ赴くことはありませんでしたが、領民への施しを積極的に行い、民から慕われました。

司馬攸は政治にも積極的に関与し、朝廷内で重要な役割を果たしました。皇太子・司馬衷（後の恵帝）には、帝王学を説き、忠告を与えました。

しかし、武帝（司馬炎）の晩年、皇太子・司馬衷が暗愚であったため、朝廷内外では司馬攸への期待が高まりました。中書監の荀勗らは、司馬攸が皇位を継ぐことを恐れ、武帝に讒言しました。

282年、武帝は司馬攸を青州へ赴任させることを決定します。司馬攸はこれに落胆し、荀勗らの策謀であることを悟りました。怒りのあまり病を発し、283年に38歳で亡くなりました。

人物

司馬攸は、礼儀正しく、過ちを犯すことがほとんどありませんでした。人に借りた書物は、誤りを正してから返却するほど几帳面な性格でした。また、自身の諱に触れられると涙を流したと伝えられています。兄の武帝も、弟の司馬攸を敬い、言葉を選ぶほどでした。

斉王攸帰藩事件

福原啓郎は、司馬攸を巡る一連の事件を「斉王攸帰藩事件」と名付け、司馬炎の天下統一後、外戚や側近が重用され、政治が私物化されることに危機感を抱いた朝臣たちが、司馬攸の帰国を期待したと指摘しています。しかし、外戚や側近らは、司馬攸の帰国によって自分たちが排除されることを恐れ、帰国に反対しました。この事件は、後の「八王の乱」の端緒となったとされています。

宗室

東萊王 司馬蕤（景回）
北海王 司馬寔（景深）
斉王 司馬冏（景治）
広漢王 司馬賛（景期） - 夭折

参考文献

* 川本芳昭『中華の崩壊と拡大 魏晋南北朝』講談社〈中国の歴史05〉、2005年2月。

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