司馬冏

司馬冏（しば けい）：西晋、八王の乱の主要人物

司馬冏（? - 303年）は、西晋の皇族であり、八王の乱で重要な役割を果たした人物です。字は景治。父は斉王司馬攸、母は賈充の娘である賈荃。

生涯

若き日の司馬冏

幼い頃から慈悲深く、困窮者への施しを惜しまない人柄で知られていました。父の司馬攸は、朝廷内で荀勗らと対立し、讒言によって青州への出鎮を命じられました。司馬攸は病を理由に洛陽残留を望みましたが許されず、赴任の途上で病死しました。司馬冏は父の死に際し、典医らが荀勗らに意を受けて病状を偽って報告したことを糾弾し、司馬炎（武帝）に訴え出て典医らを処刑させました。この行動は賞賛され、司馬攸の後を継いで斉王に封じられました。

賈氏誅滅への関与

元康年間、賈南風ら賈氏一族が権勢を振るい、皇太子司馬遹を殺害するなど暴虐を極めていました。300年、趙王司馬倫が賈氏誅滅を計画し、司馬冏に協力を求めると、司馬冏はこれに同意しました。司馬倫は政変を起こし、司馬冏は兵を率いて宮中に突入、賈南風を捕縛しました。賈南風は幽閉後に自殺し、賈氏一族も処刑されました。この功績により、司馬冏は游撃将軍に任じられました。

司馬倫への不信感と挙兵

しかし、司馬冏は司馬倫が国政を専断することに不満を抱き、司馬倫の側近である孫秀によって許昌へ左遷させられました。司馬倫が帝位を簒奪すると、司馬冏は討伐を計画。王盛・王処穆と結託しましたが、計画が露見する恐れから二人を討伐し、司馬倫を安心させました。その後、司馬冏は管襲を殺害し、豫州刺史何勗らと共に司馬倫に対して挙兵。成都王司馬穎らに協力を呼びかけ、各地の将軍や州郡県国にも檄文を送りました。司馬穎らが呼応し、司馬倫は廃位され恵帝が復位しました。

権勢と専横

司馬冏は大司馬に任じられ、朝政を委ねられました。しかし、権力を握ると奢侈な生活を送るようになり、政治を顧みなくなりました。独断で人事を決定し、邸宅は皇宮に匹敵するほど豪華になり、民衆の失望を招きました。

侍中嵆紹や鄭方らに諫められましたが、改めることはありませんでした。王豹は、諸王をそれぞれの封国に帰らせ、司馬冏自身は宛を治めるよう進言しましたが、司馬乂の怒りを買い、王豹は処刑されました。司馬冏の専横は日増しに酷くなり、張翰や顧栄らは彼から離れていきました。

敗北と死

司馬顒は司馬冏の罪状を上書し、司馬乂に司馬冏打倒の檄文を送りました。司馬乂が挙兵し、司馬冏を攻撃。三日間の戦いの末、司馬冏は捕らえられ、恵帝の助命も空しく処刑されました。司馬冏に協力した者達は三族を誅滅され、その死体は西明亭に晒されました。

死後

後に司馬冏の罪は軽減され、子の司馬超が県王に封じられ、祭祀を継承しました。懐帝の時代には、司馬冏は斉王の封号を回復され、大司馬の位を追贈されました。しかし、永嘉の乱が起こると、司馬超の兄弟は皆殺され、司馬冏の血筋は絶えました。

逸話

司馬冏が執政していた頃、ムクドリが大司馬府に入って不吉な予言をしたため、司馬冏はこれを殺しました。また、妊婦が大司馬府で出産させてほしいと申し出ましたが、識者はこれを不吉だと解釈しました。これらの逸話は、司馬冏の没落を暗示していたとされています。

評価

司馬冏は、賈氏誅滅という功績を挙げた一方で、権力を握ると専横な振る舞いを繰り返しました。その結果、他の諸王との対立を招き、八王の乱を激化させる一因となりました。彼の生涯は、権力を持つ者の驕りがもたらす悲劇を物語っています。

参考文献

『晋書』巻59 列伝第29
『資治通鑑』巻83、巻84

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