八王の乱

八王の乱

八王の乱（はちおうのらん）は、中国の西晋王朝末期に発生した、皇族間の大規模な内乱です。この内乱は、西晋を衰退させ、その後の中国を長期間にわたる分裂時代へと導く要因となりました。

八王とは

八王とは、この内乱の中心となった8人の皇族（諸王）を指します。

汝南王司馬亮（じょなんおうしばりょう）
楚王司馬瑋（そおうしばい）
趙王司馬倫（ちょうおうしばりん）
斉王司馬冏（せいおうしばけい）
長沙王司馬乂（ちょうさおうしばがい）
成都王司馬穎（せいとくおうしばえい）
河間王司馬顒（かかんおうしばぎょう）
東海王司馬越（とうかいおうしばえつ）

これらの諸王は、司馬懿の息子や孫、兄弟など、西晋の皇族であり、それぞれが強大な軍事力を持っていました。

八王の乱に至る背景

西晋の武帝（司馬炎）は、呉を滅ぼして中国を統一した後、皇族を各地に封じ、軍事力を持たせることで、王朝の安定を図ろうとしました。しかし、これが後に八王の乱を引き起こす要因となります。

武帝の死後、恵帝（司馬衷）が即位しますが、恵帝は政治能力に欠けていたため、皇后の賈南風（かなんふう）が実権を握ります。賈南風は、権勢を振るう楊駿（ようしゅん）一派を粛清し、その後、汝南王司馬亮や衛瓘（えいかん）らを排除しますが、その過程で皇族間の対立が激化しました。

八王の乱の経過

1. 賈南風の専横と司馬倫の台頭: 賈南風は皇太子を廃位し、殺害したことで、趙王司馬倫の反発を招きます。司馬倫はクーデターを起こし、賈南風を殺害して実権を掌握、さらに帝位を簒奪します。

2. 司馬倫の失脚と斉王司馬冏の専横: 司馬倫の簒奪に対し、斉王司馬冏が挙兵。司馬穎、司馬顒らが呼応し、司馬倫を倒します。司馬冏が実権を握りますが、その専横ぶりに司馬顒が反発し、司馬乂に司馬冏討伐を命じます。司馬乂は司馬冏を殺害し、朝政を掌握します。

3. 司馬乂の殺害と司馬穎の台頭: 司馬顒は司馬乂が司馬冏を討った後、司馬穎を擁立して自らが宰相となることを計画します。司馬顒と司馬穎は司馬乂を討伐し、司馬乂は殺害されます。司馬穎が丞相となり、皇太弟となりますが、政治は混乱しました。

4. 司馬穎の失脚と司馬越の台頭: 司馬穎の奢侈な振る舞いに反発した東海王司馬越が挙兵します。司馬穎は王浚らに敗れて失脚し、恵帝を連れて洛陽へ逃走します。司馬越が台頭し、恵帝を擁して実権を掌握します。

5. 司馬越の死と西晋の滅亡: 恵帝の死後、懐帝が即位しますが、司馬越が実権を掌握し続けます。司馬越は苟晞と対立、内乱が続く中で病死します。司馬越の死後、西晋は急速に衰退し、316年に滅亡します。

八王の乱の影響

八王の乱は、西晋の国力を著しく衰退させました。皇族間の内乱によって社会は混乱し、多くの人命が失われました。また、この内乱に乗じて異民族が侵入し、五胡十[[六国時代]]と呼ばれる、中国が分裂する時代へと突入します。

八王の乱は、中国史における大きな転換点となり、その後の歴史に大きな影響を与えました。

参考文献

松丸道雄 編『世界歴史大系 中国史2』山川出版社、1996年。
三崎良章『五胡十六国 中国史上の民族大移動』東方書店、2002年2月。
福原啓郎『魏晋政治社会史研究』京都大学学術出版会、2012年。
山本英史『中国の歴史』河出書房新社、2010年10月。
* 駒田信二; 常石茂『新十八史略4』河出書房新社、1997年7月。

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