合衆国艦隊

合衆国艦隊（United States Fleet）

合衆国艦隊は、1922年から1945年まで存在したアメリカ海軍の組織です。太平洋艦隊と大西洋艦隊を統合して編成され、第二次世界大戦中に重要な役割を果たしました。

設立

1922年12月6日、太平洋艦隊と大西洋艦隊を統合し、合衆国艦隊が編成されました。当初の主要部隊は以下の通りです。

戦闘艦隊（Battle Fleet）: 司令官は大将で、太平洋方面を担当。
偵察艦隊（Scouting Fleet）: 司令官は中将で、大西洋方面を担当。
艦隊基地部隊（Fleet Base Force）: 司令官は少将で、太平洋方面を担当。
制海部隊（Control Force）: 司令官は少将で、大西洋方面を担当。

合衆国艦隊の長は合衆国艦隊司令長官（Commander in Chief, United States Fleet、略称CINCUS）で、海軍長官と海軍作戦部長の指示を受けつつも、大統領直属の組織とされていました。スペシャルサービス戦隊（カリブ海方面）、アジア艦隊（アジア・フィリピン・グアム方面）など、潜水艦を除く全米海軍艦艇の指揮権を有していました。

1930年には潜水艦隊（Submarine Force）が合衆国艦隊の指揮下に入り、1931年には制海部隊が廃止されました。

再編成

1938年、フランクリン・D・ルーズベルト大統領は、ナチス・ドイツの台頭に対抗するため、大西洋分艦隊（後に哨戒部隊と改称）を増設しました。1939年の第二次世界大戦勃発後、1940年7月には両洋海軍法案が可決され、大西洋方面に旧式戦艦4隻と航空母艦2隻が増強されました。

1941年2月、合衆国艦隊は太平洋艦隊と大西洋艦隊に分割され、常設の合衆国艦隊司令長官の職は廃止されました。地域別の3艦隊（太平洋艦隊、大西洋艦隊、アジア艦隊）は海軍省の管轄下となり、合衆国艦隊は管理単位としてのみ存在しました。2つ以上の艦隊が共同で行動する場合には、3艦隊の司令長官の中から合衆国艦隊司令長官が任命されることになりました。

この再編に際し、合衆国艦隊司令長官ジェームズ・O・リチャードソン大将は、ルーズベルト大統領の真珠湾常駐命令に反対し、サンディエゴへの駐留を主張したため解任されました。太平洋艦隊司令長官にはハズバンド・E・キンメル少将が起用され、必要に応じて合衆国艦隊司令長官を兼務することになりました。1941年4月には、太平洋艦隊から空母「ヨークタウン」など多数の艦艇が大西洋艦隊に移され、太平洋戦争開戦時の戦力配置が完了しました。

第二次大戦中の編成

真珠湾攻撃後の1941年12月17日、キンメル大将は太平洋艦隊司令長官を解任されました。フランク・ノックス海軍長官はルーズベルト大統領に合衆国艦隊司令長官の復活を提言し、大西洋艦隊司令長官アーネスト・J・キング大将が起用されました。

合衆国艦隊司令長官は、地域別3艦隊の司令長官よりも上位に位置づけられ、大統領直属の組織となりました。沿岸警備艦隊を含む全米艦艇の指揮権が与えられました。また、司令長官の略称であるCINCUSが「Sink us（我々を沈めろ！）」に通じるとして、COMINCH（コミンチ）に改称されました。司令部はワシントンD.C.の海軍省内に設置されました。

キング合衆国艦隊司令長官と海軍作戦部長ハロルド・R・スターク大将の間で、どちらが海軍のトップになるかで意見の対立が生じました。ルーズベルト大統領は、キング司令長官に海軍作戦部長を兼任させることでこの問題を解決しました。この体制は終戦まで続きました。

当時の主な司令長官は以下の通りです。

合衆国艦隊司令長官兼海軍作戦部長（COMINCH-CNO）: アーネスト・J・キング大将（1944年12月17日に元帥に昇進）
太平洋艦隊司令長官兼太平洋方面軍最高司令官（CINCPAC-CINCPOA）: チェスター・W・ニミッツ大将（1944年12月19日に元帥に昇進）
大西洋艦隊司令長官（CINCLANT）: ロイヤル・E・インガソル中将（1942年7月1日に大将に昇進）
アジア艦隊司令長官（CINCAF）: トーマス・C・ハート大将

アジア艦隊は戦力不足のため、1942年2月15日に消滅し、残存艦艇は太平洋艦隊に吸収されました。

1943年8月には、艦隊に艦隊番号が付与され、編成が明確化されました。

太平洋艦隊の艦隊には奇数番号が付与されました。
ウィリアム・F・ハルゼー大将指揮の南太平洋艦隊は第3艦隊に改称。
レイモンド・A・スプルーアンス大将指揮の中部太平洋艦隊は第5艦隊に改称。
マーク・A・ミッチャー中将指揮の空母部隊は、第3艦隊所属時は第38任務部隊、第5艦隊所属時は第58任務部隊と呼称。
南西太平洋海軍部隊を前身とする艦隊は第7艦隊と改称されましたが、太平洋艦隊には属さず、ダグラス・マッカーサー陸軍大将の指揮下に入りました。第7艦隊の中核戦力は旧式戦艦や護衛空母で構成されていました。
大西洋艦隊に所属する艦隊には偶数番号が付与されました。対Uボート戦を担当する第10艦隊は、キング大将が司令官を兼任し、大西洋艦隊には属していませんでした。

1944年9月には、キング元帥の提言で合衆国艦隊副司令長官（DCOMINCH）のポストが増設され、リチャード・S・エドワード中将が任命されました。また、海軍作戦部に次長（DCNO）のポストも増設され、エドワード中将が兼任しました。

大戦後

終戦後、合衆国艦隊司令部には司令長官を存続させるべきだという意見もありましたが、海軍のトップは海軍作戦部長であるべきだというキング司令長官の主張により、1945年10月に合衆国艦隊は廃止されました。その機能は海軍作戦部長に吸収されました。

歴代司令長官

歴代の合衆国艦隊司令長官は以下の通りです。

ヒラリー・P・ジョーンズ 1922～1923
ロバート・E・クーンツ 1923～1925
サミュエル・S・ロビンソン 1925～1926
チャールズ・F・ヒューズ 1926～1927
ヘンリー・A・ワイリー 1927～1929
ウィリアム・V・プラット 1929～1930
エヒュ・V・チェイズ 1930年9月17日～1931年9月15日
フランク・H・ショフィールド 1931年～1932年
リチャード・H・リー 1932年～1933年
デヴィッド・セラー 1933年6月10日～1934年6月18日
ジョセフ・M・リーヴス 1934年2月26日～1936年6月
アーサー・J・ヘプバーン 1936年6月24日～1938年
クロード・C・ブロッホ 1938年～1940年1月6日
ジェームズ・O・リチャードソン 1940年1月6日～1941年1月5日
ハズバンド・E・キンメル 1941年2月～1941年12月（必要時に兼任）
アーネスト・J・キング 1941年12月30日～1945年10月10日

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