吉住小三郎

吉住小三郎

吉住小三郎（よしずみ こさぶろう）は、近世中期以降にわたり長唄唄方の名跡として知られています。現在までに七代を数え、それぞれの時代で長唄の世界に貢献してきました。

初代 吉住 小三郎

初代吉住小三郎は、元禄12年（1699年）に生まれ、宝暦3年（1753年）に没しました。幼名は仙次郎といい、摂津国住吉（現在の大阪府）の出身です。住吉大社の神官、あるいは伶人の家柄であったとされ、芸名である「吉住」は住吉を逆にしたものと伝えられています。六代目杵屋喜三郎または四代目中山小三郎に師事し、仙次郎の名で初舞台を踏みました。特に唄浄瑠璃を得意とし、「娘道成寺」の初演で大きな評判を得ました。坂田兵四郎、初代松島庄五郎と共に「名人上手」と称されました。

二代目 吉住 小三郎

二代目吉住小三郎は、寛政12年（1800年）に生まれ、嘉永7年（1854年）に没しました。四ツ谷の芋屋の生まれで、幼名は五郎三郎、通称「芋五郎」と呼ばれていました。三代目芳村伊三郎の弟子となり、芳村五郎治として初舞台を踏み、後に吉住小八と名乗りました。天保6年（1835年）頃には三代目芳村伊十郎を襲名、さらに花垣五郎三郎を経て、弘化3年（1846年）に二代目吉住小三郎を襲名しました。「芋屋の小三郎」として親しまれ、初代同様に唄浄瑠璃を得意としました。三代目岡安喜三郎、二代目冨士田音蔵と共に「天保の三名人」と称えられました。

三代目 吉住 小三郎

三代目吉住小三郎は、天保3年（1832年）に江戸で生まれ、明治22年（1889年）に没しました。二代目の弟子であり、前名は吉住小太郎でした。万延元年（1860年）に三代目吉住小三郎を襲名しました。

四代目 吉住 小三郎

四代目吉住小三郎は、明治9年（1876年）に生まれ、昭和47年（1972年）に没しました。明治22年（1889年）に四代目吉住小三郎を襲名し、昭和38年（1963年）に五代目に家督を譲り、吉住慈恭と号しました。

五代目 吉住 小三郎

五代目吉住小三郎は、明治41年（1908年）に東京で生まれ、昭和58年（1983年）に没しました。四代目の長男であり、本名は吉住秀雄。大正13年（1924年）に二代目吉住小太郎を襲名し初舞台を踏みました。戦後は東京音楽学校（現東京藝術大学音楽学部）で後進の指導にあたり、長唄の普及に尽力しました。昭和38年（1963年）に五代目吉住小三郎を襲名。息子に六代目小三郎、花垣嘉秀（三味線方）、吉住小貴三郎（唄方）がいます。

六代目 吉住 小三郎

六代目吉住小三郎は、昭和6年（1931年）に東京で生まれ、平成18年（2006年）に没しました。五代目の長男であり、本名は吉住隆雄。昭和29年（1954年）に東京芸術大学邦楽科を卒業、昭和31年（1956年）に同大学研究科を修了しました。祖父である吉住慈恭（四代目）に師事し、吉住小三治郎を名乗り、昭和30年（1955年）に初舞台を踏みました。昭和52年（1977年）に長唄十人会を結成。昭和58年（1983年）に父の死去を受けて六代目吉住小三郎を襲名し、翌年には長唄協会常任理事に就任しました。作曲家としても活動し、「平賀源内」などの作品があります。がん性胸膜炎のため死去しました。

七代目 吉住 小三郎

七代目吉住小三郎は、昭和39年（1964年）に東京で生まれました。六代目の長男であり、平成20年（2008年）に七代目吉住小三郎を襲名し、家元を継承しました。

参考文献

吉住会公式サイト「吉住流の代々家元」
『翁草』 四代目吉住小三郎　吉住小太郎 凸版印刷株式会社 非売品 (1963年)

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