吉原功

吉原功：レスリングからプロレス、そして国際プロレスの旗手

吉原功（よしはら いさお）は、1930年3月2日生まれ、1985年6月10日没。岡山県出身のレスリング選手、プロレスラー、実業家として、日本プロレス界に大きな足跡を残した人物である。早稲田大学レスリング部を経て東洋製鋼に入社。その後、力道山に見出され、日本プロレスに入門する。

日本プロレス時代、吉原は1960年には第2代日本ライトヘビー級王者に輝いた。得意技はコブラツイスト（アバラ折り）。しかし、当時の日本プロレスは力道山と外国人選手の対決が中心であり、日本人同士の対戦は少なかったため、王座としてのインパクトは限定的だった。

選手として活躍後、日本プロレスの営業部長に就任するが、力道山死去後の経営争いに巻き込まれ、1966年に退社。その後、ヒロ・マツダをエースに迎え、国際プロレスを設立した。国際プロレス社長として、吉原は経営手腕だけでなく、プロレス界に革新的な試みを数多く導入した。

国際プロレスにおける功績と革新

国際プロレスでは、吉原はTBSや東京12チャンネルの中継解説者としても活躍し、辛口の評論で知られた。日本レスリング協会との繋がりを生かし、ビル・ロビンソンやアンドレ・ザ・ジャイアントら、後にスターとなる多くの選手を招聘。アメリカンスタイルではなく、ヨーロッパスタイルのプロレスを志向し、ヨーロッパ出身のレスラーを積極的に起用した。その戦略は、人材の豊富さと比較的安いギャラのメリットを生かすものであった。

さらに、吉原はプロレス界に様々な革新をもたらした。選手との文書契約導入、金網デスマッチ、選手の入場テーマ曲の使用、総当たりリーグ戦におけるバッドマーク・システム（持ち点制）など、現代のプロレスにも受け継がれているシステムも多い。

日本プロレスに対抗するため、NWA加盟を申請するも日本プロレスの妨害にあい失敗。また、新日本プロレス、全日本プロレスと共に日本プロ・レスリング協会設立を提案したこともあった。1973年には、54日間に渡る非公式巡業「合宿シリーズ」を敢行。これは吉原自身の健康問題がきっかけとなったと言われている。

国際プロレス崩壊後と最期

1981年、国際プロレスは興行を停止、解散した。吉原は保険会社のセールスマンに転身するが、1984年に胃潰瘍で入院。同年7月には新日本プロレスの顧問に就任し、プロレス界に復帰する。しかし、1985年6月10日、胃がんで死去。55歳だった。

吉原の死は、国際プロレス関係者に大きな衝撃を与えた。葬儀では、ラッシャー木村が弔辞を読み上げ、「国際プロレス精神を忘れずに闘っていきます」と誓った。国際血盟軍のメンバーは「打倒馬場・猪木」を誓い、吉原への弔意を示した。

人物像とエピソード

吉原は厳格な一面と、選手を大切にする温かい一面を持っていた。現役時代、力道山に無理強いされ、負傷したまま試合に出場したエピソードや、国際プロレス選手との深い絆、マスコミへの強硬な姿勢などは、彼の強い意志と信念を示している。

無口な性格であった一方、酒の席では選手たちと朝まで語り合うこともあった。入院時には見舞金を拒否するも、国際プロレス出身の選手からの感謝の言葉に心を打たれたというエピソードも残されている。1972年の名古屋大会での「打倒日本プロレス」勝利時の喜びようは、周囲を驚かせたという。

吉原の遺志は、彼の息子たちにも受け継がれている。長男は吉原から柔道を習い、次男は国際プロレスへの特別な思いを抱き、父を慕う人々への感謝を述べている。

吉原功は、レスリング選手、プロレスラー、そして国際プロレスの創設者、経営者として、プロレス界に多大な影響を与えた人物である。彼の功績と生き様は、現在も多くのプロレスファンに語り継がれている。

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