吉岡範武

吉岡範武（1899年10月-1969年7月15日）は、日本の外交史に名を刻む外交官です。初代駐カンボジア特命全権大使として、日本とカンボジアの外交関係発展に大きく貢献しました。

熊本県に生まれた吉岡は、府立第四中学校（現東京都立戸山高等学校）、第三高等学校を経て、1923年に東京帝国大学法学部政治学科を卒業しました。その後、外交官としてのキャリアを歩み始めます。1936年には在中華民国大使館二等書記官に任命され、東アジア情勢の最前線で外交活動に従事しました。1940年には外務省調査部第六課長として、日本の外交政策立案に携わったと推測されます。

第二次世界大戦終結後、1945年には在フランス大使館参事官に就任。しかし、その任期は長くなく、同年、外務大臣官房儀典課長事務取扱に転じます。この職務において、吉岡は連合国軍占領下の日本で、連合軍将官の宿舎選定という極めて重要な任務を担いました。帝国ホテルの犬丸徹三氏と緊密に連携し、占領軍との円滑な関係構築に貢献したと考えられます。この経験は、複雑な国際情勢下での外交手腕を要するものであったと想像できます。

戦後の混乱期においても、吉岡は重要な役割を果たし続けました。1946年には終戦連絡京都事務局長、1948年には京都連絡調整事務局長を務め、日本の復興に尽力したと考えられます。1953年には外務省参与に就任し、外交政策の中枢で活躍しました。そして、1954年には駐カンボジア特命全権公使、翌1955年には駐カンボジア特命全権大使に昇格。カンボジアとの外交関係樹立と発展に貢献した、歴史的役割を果たしました。1959年には駐ヴァチカン特命全権大使として、バチカン市国との外交関係にも尽力しました。

彼の経歴は、激動の時代を駆け抜けた外交官としての活躍を如実に示しています。常に日本の利益を最優先に考え、国際社会における日本の地位向上に尽力した姿が想像できます。

私生活では、妻・田鶴子は青木梅三郎子爵（青木周蔵元外務大臣の養子）の長女という名家出身であり、吉岡家と青木家の繋がりは、彼の外交活動にも影響を与えた可能性があります。また、父は吉岡範策（元海軍中将）、二男は原範行（原家に入りホテルニューグランド社長や日本ホテル協会会長を歴任）という、著名な人物を輩出した家系に生まれたことも特筆に値します。

1969年、吉岡範武は逝去しました。従三位勲二等旭日重光章、正三位の叙勲を受けています。彼の功績は、日本の外交史に永遠に刻まれるでしょう。彼の生涯は、日本の近代外交史を理解する上で重要な手がかりとなります。多様な経験と、高い外交能力で日本の国際社会における地位向上に貢献した、偉大な外交官の一人であったといえるでしょう。

もう一度検索