吉崎悟朗

吉崎 悟朗（よしざき ごろう）教授

吉崎悟朗（1966年生まれ）は、日本における水産学の権威として知られる水産学者であり、東京海洋大学の教授及び水圏生殖工学研究所の所長を務めています。彼の専門分野は主に魚類発生工学および魚類繁殖生理学であり、神奈川県鎌倉市に生まれ育ちました。

学歴とキャリア

吉崎教授は1993年に東京水産大学（現・東京海洋大学）の大学院で水産学の博士課程を修了しました。同年、米国テキサス工科大学農学部において博士研究員としての活動を開始。1995年には東京水産大学水産学部の助手に就任し、その後、2003年には准教授へ昇進しました。

2012年には東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科の教授に就任し、2020年からは水圏生殖工学研究所の所長も兼務しています。彼の研究と教育の旅は、魚類研究の最前線で常に革新を追求するものであり、特に魚類に関連する遺伝子技術において顕著な成果を挙げています。

研究成果

吉崎教授が開発した「代理親魚技法」は、異なる魚種間で生殖細胞を移植し、宿主魚からドナー種の生殖細胞を生産する方法です。この技術により、ヤマメからニジマスやクサフグからトラフグを生成する成功例が数多く報告されています。特に、飼育が難しい大型の魚類であるクロマグロを近縁の小型種（サバ科等）で生産することで、養殖にかかわるコストや手間を大幅に削減できる可能性があります。

また、この技術を利用することで、絶滅危惧種の魚類の生殖細胞を保存し、将来的に宿主種を通じて繁殖させる仕組みを構築することも可能です。この点において、吉崎教授の研究は種の保存に寄与する重要な役割を果たしています。なお、彼の手法はゲノムや遺伝子を操作しないため、遺伝子組み換えやゲノム編集技術とは異なる特性を持っています。

受賞歴

その功績が評価され、吉崎教授は数々の賞を受賞しています。2002年に日本水産学会奨励賞や日本農学進歩賞などを受賞し、2003年にはマリンバイオテクノロジー学会の論文賞を受賞しました。さらに、2010年には東京テクノ・フォーラム21のゴールド・メダル賞を獲得し、2023年には紫綬褒章を受賞しました。これらの賞は彼の研究と教育への多大な貢献を証明しています。

人物像と影響

吉崎教授は、小学4年生の夏に釣りを始めたことを基に、魚に対する情熱を抱くようになりました。高校の夏休みには水産試験場での仕事を目指し、東京水産大学へ進学。その後、バイオテクノロジーの可能性を知り、研究の道へ進むこととなります。博士課程の最中、沖釣りで見た美しいマグロの群れが彼にとっての大きなインスピレーションとなり、「希少な魚を保全するための生殖細胞操作技術」という研究の方向性を決定づけました。

主な著作

吉崎教授は、多くの著書も発表しています。代表作には、単著の『サバからマグロが産まれる!?』（岩波書店、2014年）や、共著に『動物発生工学』（朝倉書店、2002年）、『いざ”生”の扉へ：クローンとエピジェネティクスの新展開』（アドスリー、2006年）、『魚類発生学の基礎』（恒星社厚生閣、2018年）などがあります。これらの著作は、彼の知識を広め、次世代の研究者や学生への影響を与えています。

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