サバ科

サバ科 (Scombridae) について

サバ科は、サバ目サバ亜目に属する魚類の分類群で、サバ、サワラ、カツオ、マグロなど、世界中の海で重要な食用魚として漁獲される多種多様な魚を含んでいます。これらの魚は、そのほとんどが暖かい海を回遊する大型の肉食魚で、沿岸地域では重要な水産資源となっています。特に日本では、サバ、カツオ、マグロは食文化に深く根付いており、重要な食用魚として広く知られています。

特徴

サバ科の魚の成魚の大きさは、種類によって大きく異なります。全長数十センチのサバ類から、全長3メートル、体重400キロを超えるクロ[[マグロ]]まで、そのサイズは様々です。体型は一般的に、頭部と尾部が細く、胴の中央が膨らんだ紡錘形または流線形をしており、これは高速で遊泳するのに適した形状です。

鱗は、ガストロと呼ばれる一部の種を除き、ほとんどの種類で退化しており、胸鰭や側線周辺など体の特定の部分にしか見られない場合があります。尾鰭は大きな三日月形に発達しており、高速遊泳を可能にしています。一方、他の鰭は比較的小さく、高速遊泳時には畳むための溝が付いています。第二背鰭と尻鰭の後ろには小離鰭が並び、尾鰭の付け根には水平隆起線が見られます。

サバ科の魚は総じて高い遊泳能力を持ち、孵化直後から死ぬまで海底に降りることなく泳ぎ続けます。遊泳時には尾柄と尾鰭を左右に激しく振り、強力な推進力を生み出します。胸鰭と水平隆起線は、主翼と水平尾翼のように機能し、浮力を保つ役割を果たします。カツオを例にとると、通常時で時速25キロ、速い時には時速100キロにも達する遊泳速度を発揮します。これは魚類の中でも屈指の速さですが、急な方向転換や旋回は苦手です。

サバ科の魚の多くは、口と鰓蓋を開けたまま泳ぎ、自動的に鰓を通過する海水で呼吸を行います。この呼吸法はラム換水と呼ばれます。泳ぎが遅い時には、他の多くの魚と同様に、口と鰓蓋をパクパクと動かす二重ポンプ換水に切り替えますが、この状態が長く続くと酸素欠乏や窒息により死に至ることがあります。

血液は他の魚に比べて赤血球が多く、筋肉に酸素を効率よく送り込めるように適応しています。さらに、マグロ類は筋肉内に奇網と呼ばれる特殊な血管網を持ち、海水温よりも高い体温を保つことで、運動能力の低下を抑えています。

生態

サバ科の魚はすべて海水魚で、熱帯から温帯の沿岸から外洋にかけての表層から中層に生息しています。汽水域に迷い込むことは稀です。単独で行動するものもいますが、多くは群れを作って行動します。

食性は肉食性で、海中を遊泳する他の魚類、甲殻類、頭足類などの小動物を捕食します。大型のマグロは、サバやカツオといった他のサバ科の魚も捕食します。一方で、小型のサバ類は動物プランクトンを濾過摂食するものもいます。

受精卵は分離浮性卵であり、産卵後は親による保護を受けることなく、海中を漂いながら発生します。寿命は数年から十数年程度です。

分類

サバ科は、以下の亜科と族に分類されます。

ウロコマグロ亜科 (Gasterochismatinae)
ウロコマグロ属 (Gasterochisma)
ウロコマグロ (Gasterochisma melampus)

サバ亜科 (Scombrinae)
サバ族 (Scombrini)
グルクマ属 (Rastrelliger)
グルクマ (Rastrelliger kanagurta)
その他数種
サバ属 (Scomber)
ゴマサバ (Scomber australasicus)
マサバ (Scomber japonicus)
タイセイヨウサバ (Scomber scombrus)
その他数種
サワラ族 (Scomberomorini)
カマス[[サワラ]]属 (Acanthocybium)
カマス[[サワラ]] (Acanthocybium solandri)
ニジョウサバ属 (Grammatorcynus)
ニジョウ[サバ]
サワラ属 (Scomberomorus)
サワラ (Scomberomorus niphonius)
オオ[サワラ]
ヨコシマ[サワラ]
その他多数の種
ハガツオ族 (Sardini)
Cybiosarda 属
和名なし(Cybiosarda elegans)
イソマグロ属 (Gymnosarda)
イソ[マグロ]
Orcynopsis属
和名なし (Orcynopsis unicolor)
ハガツオ属(Sarda)
ハガツオ (Sarda orientalis)
タイセイヨウハガツオ(Sarda sarda)
その他数種
マグロ族 (Thunnini)
Allothunnus 属
ホソ[カツオ]
ソウダガツオ属 (Auxis)
ヒラソウダ (Auxis thazard)
マルソウダ (Auxis rochei)
スマ属 (Euthynnus)
スマ (Euthynnus affinis)
タイセイヨウヤイト (Euthynnus alletteratus)
その他数種
カツオ属 (Katsuwonus)
カツオ (Katsuwonus pelamis)
マグロ属 (Thunnus)
ビンナガ (Thunnus alalunga)
キハダ (Thunnus albacares)
メバチ (Thunnus obesus)
クロ[[マグロ]] (Thunnus orientalis)
ミナミマグロ (Thunnus maccoyii)
タイセイヨウ[クロマグロ]
コシナガ(Thunnus tonggol)
その他数種

参考文献

Fishbase - Scombridae (英語)
岡村収監修 山渓カラー名鑑『日本の海水魚』
藍澤正宏ほか『新装版 詳細図鑑 さかなの見分け方』
檜山義夫監修 『野外観察図鑑4 魚』
永岡書店編集部『釣った魚が必ずわかるカラー図鑑』
内田亨監修『学生版 日本動物図鑑』
岩井保『魚学入門』

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