吉沢実

吉澤実（よしざわ みのる）

静岡県静岡市（旧御前崎町生まれ）出身のリコーダー奏者、教育者。

武蔵野音楽大学を卒業後、さらに研鑽を積むため渡欧。1976年にはドイツ学術交流会（DAAD）の奨学生としてオルフ・インスティテュートを修了し、翌1977年にはオーストリア政府奨学生としてモーツァルテウム音楽大学リコーダー科をソリスト・ディプロムを得て卒業しました。リコーダーをフェリチタス・ケールドルファ、ワルター・ヴァーグマンに師事したほか、フルートを播博、佐伯隆夫、斉藤賀雄、ヘルムート・ツァンガレ、ルネ・ル・ロワに、古楽演奏法をニコラウス・アーノンクールに、指揮法を甲斐正雄に学ぶなど、幅広い分野で専門的な指導を受けました。

欧州滞在中はフルート奏者としても活動し、モーツァルテウム管弦楽団、オーストリア現代音楽アンサンブル、古楽アンサンブルに所属。ザルツブルク現代音楽祭ASPEKTをはじめ、著名な音楽家や演出家（オルフ、シュトックハウゼン、アーガー、カラヤン、ヌレエフなど）との共同作業や公演に参加し、経験を積みました。

帰国後は、その教育者としての才能を活かし、NHK教育テレビジョンの人気番組「ふえはうたう」（1986年-1997年）や「趣味悠々」（2001年、2009年）で講師を務め、お茶の間にもリコーダーの魅力を伝えました。教育機関においても、ウィーン国立音楽大学、モーツァルテウム音楽大学の客員講師、横浜国立大学、東京芸術大学の講師を歴任し、後進の指導にあたっています。国内外でのコンサート活動に加え、映画、テレビ番組、CMなど、多様なメディアの録音にも携わっています。

音楽活動の傍ら、海外のNPOやJICAの活動にも積極的に参加し、東南アジアの子どもたちの自立支援に協力するなど、社会貢献活動にも熱心です。NHK教育番組の企画委員を務めたほか、文部科学省や法務省が主催する講座での講師も務めるなど、教育・文化分野における幅広い諮問や啓発活動にも関わっています。

長年の功績が認められ、2003年に静岡市芸術文化奨励賞、2004年に静岡県芸術文化奨励賞、2020年には久留島武彦文化賞を受賞しています。

現代作品の委嘱初演を行うリコーダーアンサンブルLa Stradaを主宰するなど、演奏活動も継続。また、横浜市磯子区民文化センター「杉田劇場」の常任理事を務めるなど、文化施設の運営にも関与しています。

多数のCD、DVD、VTRといった映像・音声教材、CD-ROM教材、そしてリコーダー教則本、アンサンブル譜、専門書、教科書執筆など、その著作物は非常に多岐にわたり、日本のリコーダー教育や普及における中心的な役割を果たし続けています。

吉澤実の活動は、単なる演奏家にとどまらず、教育者、研究者、文化振興家として、多角的な視点からリコーダー音楽の発展に寄与しています。

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