吉田善彦

吉田善彦: 近代日本画の巨匠

吉田善彦（よしだ よしひこ、1912年10月21日 - 2001年11月29日）は、東京都出身の著名な日本画家であり、教育者として多くの後進の指導に当たりました。本名は誠二郎で、彼の画業は日本画の領域において重要な影響を及ぼしました。

吉田様式と独自技法

日本画を学ぶ中で、特に速水御舟の教えから影響を受けました。吉田の技法は、古典から吸収した教訓を基にしたもので、1940年から始まった法隆寺金堂壁画の修復事業では、先人たちの作品に直接触れ、深い理解を得ました。彼の独特のアプローチとして、「一度色を塗った後に金箔を施し、その上に再度色を重ねる」という手法を確立し、光を巧みに表現する柔らかな日本画を生み出しました。

幼少期と教育背景

吉田は老舗の呉服屋の次男として生まれました。小学校時代には南画家の中田雲暉に絵画を学び、その後、1929年に速水御舟に師事しました。1935年に速水が急逝した後は、小林古径の指導を受けながら、自身の画風を探求しました。1937年には、幸三郎の助けを借りて完成させた「もくれんの花」が第24回日本美術院展覧会に初めて入選し、彼の名声が広まりました。

法隆寺金堂壁画模写事業と戦後の復興

1940年に彼は法隆寺金堂壁画の模写事業に参画し、ここでの経験が彼の画技をさらに深める契機となりました。戦時中には応召義務で戦地に赴きますが、1946年に復員後は再び金堂壁画の模写に従事し、技術を磨き続けました。1954年には東京世田谷区に帰郷し、安田靫彦の門下生として火曜会にも参加。1957年から1963年には4作品が院展奨励賞を受賞し、1964年には日本美術院同人に推挙されました。

教育者としての活躍

1964年から東京芸術大学の講師を務め、後に助教授、さらには教授に就任し、1980年まで教壇に立ちました。彼の教育は多くの学生に影響を与え、彼自身の作品とともに日本画の未来を育む重要な役割を果たしました。また、1970年には第三次中世オリエント遺跡学術調査団の模写班に参加し、国際的にもその名を広めます。

受賞歴と晩年

吉田の作品は数多くの賞を受賞しています。1973年には第58回院展で文部大臣賞、1978年には第63回院展で日本芸術院賞を受賞。1981年には第66回院展で内閣総理大臣賞を受賞し、この作品は翌年には毎日芸術賞も受賞しました。1986年には東京芸術大学の名誉教授となり、1987年には日本美術院の理事に就任しました。

2001年11月29日、吉田は肺炎により東京都世田谷で逝去し、享年89歳でした。彼の作品と教育は、今も日本画の世界に息づいています。彼の芸術の痕跡は、多くの美術館に所蔵されており、実績が語る通り日本画の発展に寄与した偉人であると言えるでしょう。

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