吉田町 (愛媛県)

愛媛県吉田町：みかんと真珠が輝く、歴史と自然の宝庫

吉田町は、愛媛県南予地方に位置し、宇和島市の北に隣接していた町です。現在は宇和島市の一部となっていますが、その歴史と文化は今も息づいています。

地理

吉田町は、宇和海に突き出した半島と、その付け根の部分から成り立っています。町の中心部を国道56号線が南北に縦断し、北は法華津峠を越えて宇和町へ、南は知永峠を越えて宇和島市へと続いています。

平地は少なく、急傾斜地が大部分を占めています。宇和海では真珠やハマチの養殖が盛んで、海には筏が並び、山にはミカン畑が広がっています。この独特な景観が、吉田町の特徴の一つです。かつては伊予吉田藩の陣屋町として栄え、その名残を今も感じることができます。

主な山としては、高森山と遠見山が挙げられます。

町名の由来

「吉田」という名前の由来には諸説あります。その一つとして、この地がヨシの群生する湿田であったため、「よしだ」と呼ばれるようになったという説があります。また、吉田藩が分立した際の古文書に「吉田新田」という名前が見られることから、この頃には「吉田」という呼称が定着していたと考えられます。

歴史

藩政期

吉田町は、伊予吉田藩に属していました。藩政時代には、陣屋町として栄え、地域の中心的な役割を果たしていました。

明治以降

明治時代に入ると、吉田町ではミカンの栽培が盛んになりました。特に明治10年代には、土佐から持ち込まれたミカンが栽培され、全国の品評会で一等の栄誉に輝いたこともあります。また、金融業も盛んになり、楽終社や南鉾社が設立され、後にそれぞれ吉田商業銀行、伊予吉田銀行と改称されました。

明治22年には、東小路、西小路、北小路、本町、裡町、魚棚町の合併により、吉田町が成立しました。明治末期から大正にかけては、養蚕も盛んに行われましたが、第一次世界大戦後の不況により衰退しました。

昭和に入ると、昭和13年に立間尻村を編入、昭和30年には奥南村、立間村、喜佐方村、玉津村、高光村の一部と合併し、新たな吉田町が誕生しました。昭和41年には昭和天皇、香淳皇后が訪れ、町の農業協同組合を視察されました。

その後、昭和44年には国道56号の法華津隧道が開通し、宇和町との交通が便利になりました。しかし、平成17年には宇和島市、三間町、津島町との合併により、吉田町は自治体としての歴史を閉じました。

行政

吉田町は、財政状況が厳しく、効率化のために市町村合併を迫られていました。そのため、宇和島市との合併は必然的な選択でした。平成17年8月1日、吉田町は宇和島市、三間町、津島町と合併し、新たな宇和島市となりました。

経済・産業

吉田町は、農業と水産業が盛んな町でした。

農業

吉田町は、愛媛県内でも有数のみかん産地として知られており、愛媛みかんの発祥地の一つとも言われています。明治時代からミカンの栽培が始まり、昭和30年代には黄金時代を迎えました。しかし、近年では、過剰生産や外国産フルーツとの競争により、生産者価格の低迷が続いています。吉田のみかんは「宇和青果」のブランドで出荷されています。

水産業

吉田町では、魚類養殖と真珠養殖が盛んです。ハマチ養殖は、昭和39年に立目地区で始まり、湾内は波が穏やかで養殖に適しているため、すぐに広がりました。真珠養殖は、昭和32年に花組で始まりました。吉田湾は、水深があり、潮流が新鮮で、水温も適しているため、良質な真珠が育ちます。また、背後の山々が石灰岩質であるため、独特の水質も真珠養殖に適しています。

商業

吉田町の中心部には商店街がありますが、近年では、宇和島市の大規模スーパーに購買力が奪われています。宇和町卯之町（現: 西予市）にも商業集積があり、両方向から消費者が流出しています。将来的に松山自動車道が宇和島まで開通すると、さらに消費者が素通りしてしまうのではないかと懸念されています。

教育

吉田町には、以下の教育機関がありました。

高等学校: 愛媛県立吉田高等学校
中学校: 吉田町立吉田中学校
小学校: 吉田町立吉田小学校、宇和島市立奥南小学校、宇和島市立喜佐方小学校、宇和島市立立間小学校、宇和島市立玉津小学校

また、町立図書館や公民館などの社会教育施設も整備されていました。

交通

鉄道

JR予讃線が通り、立間駅と伊予吉田駅がありました。

道路

国道56号と国道378号が町内を通っていました。また、県道も整備されていました。

バス

宇和島自動車のバスが、吉田と宇和島の間を頻繁に運行していました。一部は、明浜町や岩松まで運行していました。また、松山 - 宇和島間の特急・急行バスも利用できました。

観光

吉田町には、以下のような観光地があります。

法華津峠（眺望）
吉田ふれあい国安の郷
フィッシングセンター
観光文化センター
吉田藩陣屋跡
観光みかん園
貝之浦海水浴場
吉田きなはいや
きなはいや三万石

また、安藤神社春祭りや夏祭りなどのイベントも開催されていました。

特産物

吉田町の特産品としては、温州みかん、ポンカン、温室みかん、伊予柑などの柑橘類、真珠、ハマチ、ちりめんなどの海産物、蒲鉾などの水産練製品が挙げられます。また、みかん饅頭やフルーツゼリーなどの加工品も人気があります。

郷土料理

吉田町の郷土料理としては、ふくめん、ふかの湯ざらし、じゃこ天、みかんうどんなどがあります。

出身者

吉田町出身の著名人としては、元新体操選手の大塚裕子さん、イラストレーターのカナヘイさん、八十八ヶ所巡礼のkenzoooooooさんとマーガレット廣井さん、極洋元社長の志水広典さん、実業家の山下亀三郎さんなどがいます。

まとめ

吉田町は、みかんと真珠が輝く、歴史と自然の豊かな町でした。現在は宇和島市の一部となりましたが、その文化と伝統は、今も大切に受け継がれています。

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