吉田苞竹

吉田 苞竹（よしだ ほうちく）

吉田苞竹は、明治23年（1890年）12月20日に山形県に生まれた日本の書家です。彼は字を子貞とし、苞竹は号の一つです。また、無為庵主人や逍遙窟主人、清泉などの別号も持ちました。晩年の作品には「苞竹懋」や「懋」といった落款が多く見られます。

生涯と業績

大正時代末期、書道界は大規模な団体結成や書道展の開催といった活況に包まれていました。この時期に多くの著名な書家が登場し、吉田苞竹もその一人として頭角を現しました。彼は有名な書家の比田井天来から「東の苞竹、西の尚亭」と称されるほどの実力を持っていました。

苞竹は、その著書『碑帖大観』をはじめとする多くの書道に関する出版物を刊行し、書道の普及に貢献しました。この『碑帖大観』は、中国の著名な碑帖を収めた特筆すべき作品で、書道界に新たな風を吹き込みました。また、彼は月刊誌『書壇』を創刊し、初号は瞬く間に売り切れ、再版されるほどの人気を博しました。この媒体で育った若手の書家たちが後に書道界で活躍し、彼の影響を受けました。

略歴

• - 明治23年（1890年）: 山形県西田川郡鶴岡町に誕生
• - 明治35年（1902年）: 黒崎研堂の門に入り書道と漢籍を学ぶ
• - 大正4年（1915年）: 文部省教員検定試験の習字科に合格
• - 大正8年（1919年）: 書道研究の志を持ち上京
• - 大正10年（1921年）: 松本芳翠、相沢春洋と共に『書海』を刊行
• - 大正13年（1924年）: 『碑帖大観』第1巻を刊行
• - 昭和3年（1928年）: 書壇社を設立し、月刊誌『書壇』を創刊
• - 昭和5年（1930年）: 泰東書道院第1回展に審査員として参加
• - 昭和15年（1940年）: 永眠

書道会の創立に尽力

吉田苞竹は、書道団体の創立にも力を注ぎました。特に戊辰書道会は、多くの書家を集めた団体であり、彼はこの会の発起人の一人でもあります。この団体は、日本書道作振会から独立して創立され、書道界を大きく揺るがしました。

また、彼は東方書道会の設立にも関与し、役員として書道の発展に寄与しました。このような活動を通じて、彼は書道界に新たな価値をもたらしました。

書家としての傾倒

苞竹は、日下部鳴鶴の門下生として忠実に鳴鶴の書法を学び、特に中国の歴史的な書家である鄭道昭の書に深く傾倒しました。彼は、『書壇』誌上で鄭道昭を称賛する文章を掲載し、その影響力を広めました。

生誕110年記念碑

2000年3月には、苞竹の生誕110年を記念して、彼の書いた詩を称える詩書碑が中国の山東省に建立されました。彼の業績と影響は、今もなお多くの人々に受け継がれています。

主な作品

• - 論書詩: 鄭道昭の碑を詠んだ詩で、行草体で書き上げられている。
• - 伊楼波歌六曲屏風: 昭和13年にいろは歌を草仮名で表現した作品です。

日本書道史の中で、吉田苞竹はその卓越した技術と活動によって、書道界の発展に多大な影響を与えた重要な人物です。彼の作品や教育が今も書道を学ぶ人々にとって貴重な指針となっています。

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