吉田賢龍

吉田 賢龍（よしだ けんりゅう）は、明治3年（1870年）2月5日（新暦3月6日）に生まれ、昭和18年（1943年）1月4日に72歳で逝去した日本の教育者です。前名を三次郎と称し、石川県平民の家系に生まれました。

経歴

吉田賢龍の教育者としてのキャリアは多岐にわたります。石川県に生まれ、京都府立尋常中学、第三高等中学を経て、明治30年（1897年）に東京帝国大学文科大学哲学科を卒業しました。

大学卒業後、彼はすぐに真宗東京中学（現在の武蔵野大学附属千代田高等学院）の主幹兼教授に就任し、明治33年（1900年）からは3年間にわたり校長を務めました。その後は早稲田大学で講師を務め、明治40年（1907年）には旧制千葉中学校（現在の千葉県立千葉高等学校）の校長に着任しました。

大正3年（1914年）には第七高等学校造士館（現在の鹿児島大学の前身の一つ）の事務取扱を拝命し、翌大正4年（1915年）4月14日には館長（校長）に昇任します。昭和2年（1927年）には広島文理科大学の創立委員を委嘱され、昭和4年（1929年）には広島高等師範学校の校長を務めながら、広島文理科大学（ともに現在の広島大学の前身の一つ）の初代学長に就任しました。翌昭和5年（1930年）3月には、昭和天皇に対し3度にわたりご進講を行う栄誉に浴しました。昭和9年（1934年）6月に文理科大学長を退任した後、旧制修道中学校（現在の修道中学校・修道高等学校）の校長を務めます。昭和10年（1935年）には広島文理科大学名誉教授の称号を得ました。

人物と親交

吉田賢龍は、同郷の作家である泉鏡花と親友でした。特に、明治36年（1903年）に鏡花が妻すずと結婚する際には、結婚資金を工面するなど、物心両面で支援を行いました。また、鏡花の代表作の一つである小説『高野聖』は、吉田賢龍がかつて経験した飛騨越えの体験談が着想源になったという説が広く知られています。

教育者としての活動の傍ら、趣味は謡曲であり、宗教は真宗を信仰していました。後に分家し、広島市西白島町に居を構えました。父は吉田與助、母はいよ。妻は勇。長男龍男をはじめ、多数の子どもがいました。

著作

教育や哲学、宗教に関する著作を多数発表しています。

『釈迦史伝』 常磐大定、近角常観共述、森江書店、1904年8月
『教育及宗教上より観たる 地方改善事業』 中央社会事業協会地方改善部〈地方改善事業叢書〉、1924年9月
『哲学思潮』 呉市公民講座、1930年12月
『哲学思潮と日本精神』 大阪府思想問題研究会〈思想叢書〉、1935年1月
『内的生命観』 目黒書店、1935年5月
『明朗なる人生』 広島逓信局、1937年2月

日本の教育界において重要な足跡を残した吉田賢龍は、昭和18年（1943年）にその生涯を閉じました。

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