吉見宏明

吉見 宏明（よしみ ひろあき）は、1978年10月25日に愛媛県で生まれた元プロ野球選手です。主に二塁手や遊撃手としてプレーし、右投げ左打ちでした。

彼の野球キャリアは、地元の名門校である愛媛県立松山商業高等学校から始まります。高校時代には、全国高等学校野球選手権大会（夏の甲子園）に2度、選抜高等学校野球大会（春の甲子園）に1度と、計3度も甲子園の土を踏みました。特に3年生の夏に出場した第78回全国選手権大会では、「奇跡のバックホーム」として高校野球史に語り継がれる決勝戦に、「1番・二塁手」としてフル出場しています。

高校卒業後は立正大学に進学。大学時代には、3学年上の広田庄司選手や同期の武田勝投手、金剛弘樹投手らと共に汗を流しました。また、1998年に開催された第33回IBAFワールドカップでは、野球日本代表の一員としてもプレーするなど、国際舞台も経験しています。大学3年春からは東京新大学野球連盟の2部リーグでのプレーとなりましたが、4年春にはチームを2部リーグ優勝に導くサヨナラ打を放つなど、印象的な活躍を見せました。

大学を卒業後、社会人野球の強豪である三菱ふそう川崎に入社し、野球を続けました。入社1年目から都市対抗野球大会にスタメンで出場するなど、すぐに主力として活躍。同年の神奈川県ベストナインには二塁手として選ばれる評価を得ました。しかし、2年目を迎えた2002年のオフ、プロ野球選手になるという夢を諦めきれず、チームからの退団を決意しました。これに伴い、三菱ふそうからも退社しています。

社会人野球を離れた後、吉見選手は海外に活躍の場を求めました。当初はアメリカ合衆国の独立リーグ球団との契約がまとまりかけていましたが、中華職業棒球大聯盟（CPBL）、すなわち台湾プロ野球に所属する統一ライオンズからオファーを受け、最終的に同球団への入団を選択しました。この移籍は、甲子園優勝経験を持つ日本人選手としては初めてのCPBL入りとして注目を集めました。

CPBL入団時、吉見選手はアマチュア野球の経験のみでプロ経験がなかったため、必ずしも高い前評判ではありませんでした。しかし、2003年シーズンが開幕すると、攻守にわたって安定したパフォーマンスを発揮し、チームの上位打線に定着。左投手への対応に課題が見られる点や、遊撃手としては肩が強くない点がウィークポイントとして指摘されましたが、シーズンを通して好成績を維持しました。最終的には91試合に出場し、打率.334、1本塁打、47打点という優れた成績を残しました。この活躍が評価され、シーズン終了後には、二塁手部門で最佳十人（CPBLにおけるベストナインに相当するタイトル）に選出されました。これは日本人選手としては史上初の快挙でした。

2003年シーズン終了後、吉見選手は統一ライオンズを退団し、NPB（日本プロ野球）入りを目指して同年のドラフト会議に参加しました。しかし、残念ながら彼を指名する球団はありませんでした。報道によると、中日ドラゴンズは吉見選手を高く評価しており、指名候補にも挙がっていたものの、最終的に指名を見送ったとされています。

ドラフトでの指名漏れを受けて、吉見選手のもとには日本の独立リーグや社会人野球チームからプレーのオファーが寄せられましたが、彼は現役を引退する道を選びました。2019年のインタビューで、引退を決意した理由について「台湾の野球に充実感を感じ、満足したことで踏ん切りがついた」と語っています。現在は故郷の愛媛県に戻り、家業である建設業を継いでいます。

彼のキャリアは、高校野球での輝かしい実績から始まり、大学、社会人を経て、台湾プロ野球での成功、そしてNPB入りの夢破れての引退と、波乱に富んだものでした。特に台湾での日本人初のベストナイン選出は、彼の野球人生における特筆すべき功績と言えるでしょう。

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