吉野 (防護巡洋艦)

巡洋艦吉野の概要

巡洋艦吉野（よしの）は、日本海軍の二等巡洋艦であり、吉野型防護巡洋艦の1番艦です。その設計はフィリップ・ワッツによって行われ、艦名は奈良県の名勝、吉野山から取られました。吉野は、日清戦争において重要な役割を果たし、さらに日露戦争においても活躍しました。しかし、1904年5月15日、味方艦の春日との衝突により沈没してしまいます。

歴史と建造

吉野は1892年3月1日に起工され、1893年に進水、公式に引き渡されたのは9月30日でした。竣工当初、吉野は世界最速の軍艦とされ、日本海軍における無煙火薬導入や新型測距儀（バー・アンド・ストラウド社製）を搭載した重要な艦でもありました。この艦は、坂本竜馬の立ち上げた海軍のエンタープライズとしての波瀾に満ちた歴史を持っています。

技術仕様

吉野の物理的な仕様について、垂線間長は109.728メートル、最大幅は14.021メートルで、排水量は約3,900英トンに達していました。兵装は多彩で、6インチ速射砲や4.7インチ速射砲、さらに3ポンド速射砲や計6門の魚雷発射管を備えており、その能力は戦場での優位性を確保する上で非常に重要でした。

また、艦の防御甲板は水線上で12インチ、傾斜部は水線下で1.219メートルの厚さを持っており、激しい戦闘に耐える強靭さを誇っていました。これにより、吉野は数多くの戦局で中心的な役割を果たすことができたのです。

戦歴

日清戦争では、第一遊撃隊の旗艦として活躍しました。特に1894年の豊島沖海戦や黄海海戦では、吉野の存在が指揮戦術において重要な位置を占めていました。これらの戦闘では、その性能の高さが証明され、「吉野桜に武士の姿」という評判を得ることとなります。1898年には、軍艦及び水雷艇類別の標準を制定し、吉野は二等巡洋艦に類別されました。

日露戦争では、第三戦隊に所属し、旅順口攻撃に従事しました。しかし、1904年5月15日に起きた事故により、艦は沈没します。この事故では319名の戦死者が出るなど、非常に厳しい戦局の一環として歴史に刻まれる悲劇となりました。

沈没とその後

沈没事故の発生は、日本海軍にとって厄災の日として記憶されています。この事件の結果、吉野は約300名を乗せたままとなり、319名が戦死する痛ましい結果となりました。生存者は約90名程度しかおらず、艦の喪失は大きな衝撃を広めました。その後、1905年に正式に軍艦籍から除籍されました。

まとめ

巡洋艦吉野は、日本海軍にとって重要な役割を果たした艦船ですが、その歴史は栄光と悲劇に満ちています。特に日清戦争の成功と日露戦争の悲劇が組み合わさり、艦の生涯は日本の海軍の進化の過程を象徴しています。沖合での戦いにおける輝かしい記憶は、多くの海軍関係者や国民にとって誇りである一方、沈没の悲劇は心に残る教訓とされています。

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