同相信号除去比

同相信号除去比（CMRR）

同相信号除去比（CMRR、Common-Mode Rejection Ratio）とは、差動増幅回路において、2つの入力端子に共通して加わる信号（同相信号）をどれだけ効果的に除去できるかを示す指標です。CMRRが高いほど、同相信号の影響を受けにくく、微小な差動信号を高精度に増幅できます。

CMRRの原理

理想的な差動増幅回路では、2つの入力電圧V+とV-の差(V+ - V-)に比例した出力が得られます。しかし、実際の回路では、同相信号(V+ + V-)の影響も出力に現れます。

CMRRは、この差動増幅特性と同相増幅特性の比で定義されます。CMRRが高いほど、差動信号に対する増幅率（差動利得Ad）が同相信号に対する増幅率（同相利得Acm）に比べてはるかに大きいため、同相信号の影響が小さくなります。

数式で表すと以下のようになります。

出力電圧 Vo = Ad(V+ - V-) + (1/2)Acm(V+ + V-)

ここで、Adは差動利得、Acmは同相利得です。

CMRRは通常、[デシベル]で表現され、以下の式で計算されます。

CMRR(dB) = 20log10(Ad / |Acm|)

CMRRの値は、信号の周波数によって変化することが多いため、周波数特性として表現される場合もあります。

CMRRの重要性と応用例

CMRRは、ノイズの多い環境での測定において特に重要です。例えば、熱電対を用いて温度を測定する場合、環境ノイズが両方の入力線に共通して加わり、同相信号として現れます。この場合、高いCMRRを持つ増幅器を使用することで、ノイズの影響を低減し、正確な測定結果を得ることができます。

音響機器における平衡接続もCMRRの応用例の一つです。平衡接続では、信号を2本の線で送受信することで、ノイズをコモンモードノイズとして扱い、CMRRの高い増幅器で除去することで、ノイズの少ない高品質な音声信号を得ることができます。

オペアンプにおけるCMRR

オペアンプは差動増幅回路の代表的な例であり、そのCMRRは重要な仕様の一つです。理想的なオペアンプではCMRRは無限大ですが、実際には有限の値を持ちます。

一般的なオペアンプである741型では、CMRRは約90dBです。これは多くの用途で十分な値ですが、より高精度な測定やノイズの多い環境では、120dB以上のCMRRを持つオペアンプを使用する必要があります。

まとめ

CMRRは、差動増幅回路の性能を評価する上で重要な指標です。ノイズ低減や高精度測定において、CMRRの高い増幅器を選択することは、信頼性の高いシステム設計に不可欠です。音響機器、計測機器など、様々な分野でCMRRの理解と適切な選択が求められます。

関連項目

平衡接続
XLRコネクター
* フォーンプラグ

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