名古屋幹線工事局

名古屋幹線工事局：東海道新幹線建設の軌跡

名古屋幹線工事局は、東海道新幹線の建設工事を担った日本国有[[鉄道]]（国鉄）の工事局の一つであり、1959年12月26日に設置され、1964年12月1日に廃止されました。略称は名幹工です。本稿では、名古屋幹線工事局の設立から廃止までの経緯、担当した工事区間、直面した課題、そしてその後の影響について解説します。

設立の背景と経緯

1959年4月20日、東海道新幹線の全線起工式が行われ、建設工事が正式にスタートしました。その前年の1958年12月25日には、愛知県と岐阜県内の新幹線の計画調査のため、幹線調査事務所名古屋駐在員が任命されました。その後、1959年4月18日に東京幹線工事局名古屋出張所となり、同年12月16日に「名古屋幹線工事局」が設置されました。

担当工事区間と主要構造物

名古屋幹線工事局が担当した工事区間は、境川付近から関ヶ原の西付近までの約133.4kmでした。この区間には、豊橋駅、名古屋駅、岐阜羽島駅といった新幹線駅が含まれています。また、木曽川（1,001m）、長良川（571m）、揖斐川（489m）といった長い橋梁や、関ヶ原隧道（2,810m）、坂野坂隧道（2,198m）などの長大トンネルも含まれていました。

工事の困難と工夫

戦前の弾丸列車計画において、豊橋-名古屋間の線路はほぼ選定されており、二川-蒲郡間、大高-笠寺間、名古屋駅西側は既に買収済みであったため、名古屋以東の部分は比較的早期に着工されました。名古屋市内の通過距離は17kmと長かったものの、市の協力が得られ、土地ブローカーに悩まされることもなかったとされています。

しかし、名古屋以西は弾丸列車計画において関ヶ原ルートと鈴鹿ルートのどちらにするか未決定であり、検討の結果関ヶ原ルートに決まり、岐阜県内に一駅作ることになると、岐阜・愛知の地元の意見が対立し、この間のルートはなかなか決まらず、名古屋西部の着工は東部に比べて大幅に遅れることになりました。

現場では開業に間に合わせるために突貫工事が続けられました。1964年7月25日には全線試運転が始まり、9月28日には名古屋幹線工事局管内工事竣工式が催され、10月1日の開業の日を無事迎えました。

組織と人物

名古屋幹線工事局の局長は以下の通りです。

初代局長：仁杉巌（1959年12月16日～1962年10月1日）
二代局長：鈴木隆吉（1962年10月1日～1964年12月1日）

名古屋幹線工事局の廃止とその後

東海道新幹線の開業後、名古屋幹線工事局は1964年12月1日に廃止されました。この時設置された岐阜工事局名古屋出張所も1965年4月10日に廃止されました。

管轄エリア詳細

名古屋幹線工事局は広範囲な地域を管轄していました。

東地区: 愛知県の豊橋市から名古屋市緑区にかけての地域。
主要駅: 豊橋駅
主要河川: 豊川、矢作川
主要トンネル: 坂の坂隧道
名古屋地区: 名古屋市の南区、熱田区、中川区、中村区を含む地域。
主要駅: 名古屋駅
主要河川: 庄内川
西地区: 尾張西部（西枇杷島町、新川町、清洲町、稲沢市、一宮市、尾西市）から岐阜県にかけての地域。
主要駅: 岐阜羽島駅
主要河川: 木曽川、長良川、揖斐川
主要トンネル: 関ケ原隧道
山東地区: 滋賀県坂田郡山東町。

工事誌

名古屋幹線工事局の工事に関する詳細な記録は、『東海道新幹線工事誌』としてまとめられています。この工事誌は、新幹線建設の貴重な資料として、現在も参照されています。

書名：東海道新幹線工事誌
編者：日本国有[[鉄道]]名古屋幹線工事局
発行：岐阜工事局
発行年月：1965年3月31日


名古屋幹線工事局は、東海道新幹線の建設という国家プロジェクトにおいて、重要な役割を果たしました。その短い活動期間にもかかわらず、日本の鉄道史に名を刻む存在として、記憶されるべきでしょう。

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