名古屋東照宮

名古屋東照宮について

名古屋東照宮は、愛知県名古屋市中区丸の内に鎮座する神社です。旧社格は県社で、東隣には那古野神社があります。この神社は、徳川家康公を祀るために創建されました。

歴史

1618年、尾張藩初代藩主である徳川義直が、父である徳川家康の三回忌に大祭を執り行いました。翌1619年、名古屋城三の丸にあった亀尾天王社（現在の那古野神社）の西隣に東照宮を勧請し、成瀬正成、竹腰正信を奉行、南天坊天海を導師として、9月17日に家康の神像が祀られました。この時、西隣には神宮寺である天台宗の尊寿院（権現坊）も建立されました。

創建当初、社領は1,000石で、所在地から「三之丸東照宮」とも呼ばれていました。境内は3,600坪にも及び、本殿、渡殿（石の間）、拝殿からなる権現造に、楼門、唐門、祭文殿などが備えられ、当時としては最も豪華な東照宮の一つとされていました。社殿には極彩色が施され、非常に華麗なものであったと伝えられています。

1870年（明治3年）に神仏分離令により神宮寺の尊寿院が廃寺となり、1872年（明治5年）には村社となりました。1875年（明治8年）には、名古屋鎮台が城内に置かれることになり、亀尾天王社と共に現在の場所に移築されました。その後、第2代名古屋市長となる志水忠平が徳川義直の合祀を請い、許可を得て奉斎式が行われました。1876年（明治9年）に本遷座し、1875年（明治8年）8月には県社に昇格しました。

1898年（明治31年）には、初代名古屋市長の中村修が徳川慶勝の合祀を請い、許可を得て奉斎しました。しかし、1924年（大正13年）には、義直と慶勝の御霊は旧藩士が新たに創建した尾陽神社に移され、そこで祀られることになりました。

1935年（昭和10年）には、義直以来の本殿をはじめとする主要な建造物が国宝（旧国宝、現在の重要文化財）に指定されましたが、1945年（昭和20年）の名古屋大空襲で全て焼失しました。戦後の1953年（昭和28年）に、建中寺から義直の正室である春姫（高原院）の御霊屋を移築し、本殿として再建されました。

1960年（昭和35年）には、本殿、唐門、透塀が愛知県の有形文化財に指定され、1992年（平成4年）には名古屋市都市景観重要建築物等指定物件にも指定されています。

祭神

主祭神は、徳川家康（東照大権現）です。

境内

境内には以下の施設があります。

本殿（愛知県指定有形文化財）: もとは徳川義直の正室春姫（高原院）の御霊屋として1651年に萬松寺に建てられた四方寄棟造の建物です。1914年に建中寺へ移築され、1953年に当社へ移されました。
唐門（愛知県指定有形文化財）: 唐門とされていますが、一般的な唐門形式ではありません。
透塀（愛知県指定有形文化財）
福神社: 大国主と事代主を祀っています。
御神輿庫
宝物庫
雑庫
社務所
会館

文化財

旧国宝（重要文化財）: 1935年に指定された東照宮社殿は、本殿、渡殿（石之間）、拝殿、唐門、透塀、楼門などがありましたが、1945年の空襲で焼失しました。
愛知県指定有形文化財: 1960年に指定された東照宮社殿で、本殿、唐門、透塀が含まれています。
名古屋市都市景観重要建築物等指定物件: 本殿が指定されています。

例祭

江戸時代を通じて、例祭である東照宮祭は、天王社（那古野神社）の天王祭、若宮八幡社の若宮祭と並び、名古屋三大祭とされていました。特に東照宮祭は、天保年間までに名古屋最大の祭となり、太平洋戦争前までは「名古屋祭」といえばこの東照宮祭を指すほどでした。

東照宮祭では、からくり人形を乗せた山車が出るのが恒例でした。この山車は、1619年に大八車に西行の人形を乗せたのが始まりとされ、1707年までに9台の山車が作られました。しかし、現在では東区筒井町の「湯取車」が1台のみ現存しています。

例祭日は、毎年4月16日と17日です。

交通

地下鉄: 名古屋市営地下鉄鶴舞線・桜通線 丸の内駅下車、京町通を東へ行き、長島町通を左折して徒歩約5分。
バス: 名古屋市営バス「名古屋駅」バス停から幹名駅1系統（休日は名駅14系統）に乗車し、「外堀通」バス停下車すぐ。

三之丸東照宮の模型

東京大学工学部建築学科には、戦災で焼失した名古屋東照宮の社殿を約1/20スケールで精密に再現した模型が所蔵されています。この模型は、1937年頃に調査が行われ、その結果をもとに制作されたと考えられています。模型は権現造で、戦前の名古屋東照宮の姿を伝える貴重な資料となっています。模型では、現在の本殿とは異なり、千木・鰹木が付いた瓦屋根が檜皮色で、白壁や朱色の柱と扉に極彩色が施され、内部も精密に作られています。この模型は、1937年の名古屋汎太平洋平和博覧会に出展されたもので、その後、東京大学に寄贈されました。戦前の名古屋東照宮の実測図は現存しておらず、この模型は当時の社殿を復元する上で非常に重要な手がかりとなっています。

この模型は、『小さな建築―模型のトポロジー』INAX BOOKLET Vol.7 No.2（1987年）などで紹介されています。

もう一度検索