名鉄ク2180形電車

名鉄ク2180形電車

名鉄ク2180形電車（めいてつク2180がたでんしゃ）は、1943年に名古屋鉄道（名鉄）が導入した制御車の一形式です。この電車は、直流1,500 V電化の路線にて運用される間接自動制御（AL制御）車両としてスタートしました。後に同600 V電化路線へ対応した間接非自動制御（HL制御）車両に改造されます。

導入の背景

太平洋戦争の激化により、名鉄は沿線に多くの軍事施設を抱えていました。このため、輸送量の増加に対応するための車両の必要性が高まりました。しかし、鉄道車両の製造に必要な資材は軍需品に優先的に回され、民間向けは著しく不足しています。また、日本車輌製造が軍事用に集中していたため、名鉄向けの車両製造の余力がありませんでした。これを受け、名鉄は自社工場で木造車体を使用した粗製車両を新造することにしました。

このような環境から、ク2180形は1942年に設計が認可され、最初はク2080形を基本にして車体を伸ばした形で計画されました。1943年には半鋼製車体への変更が認可され、同年内に日本鉄道自動車工業で2両が落成しましたが、3両の製造は結局実施されず、全体で2両のみの導入となりました。

仕様について

ク2180形は、総長16,000 mm、幅2,700 mmの半鋼製車体を備えた構造です。この電車は、台車を廃車発生品や古いものから流用したと言われています。前端は非貫通構造で、運転台は片側にのみ設置されています。また、客用ドアの間には座席を設けない立席スペースが設けられ、141人の定員を確保しています。

車両には日本鉄道自動車工業製のNT31釣り合い梁式台車が装備されています。この台車は優れた走行性能を発揮し、運行の安定性を提供しました。

運用の歴史

ク2180形は、モ830形と共に編成を組んで運用されていましたが、1955年には前面に貫通構造が追加されました。1965年にはモ830形が新しい系列に転用されると、本車両は運用がなくなったため、600 V電化区間用に改造されました。この改造には降圧対応や併結対応改造が含まれ、台車も新しいものに交換されました。

転属後は、小型の電気パワースイッチを使用したHL制御で運行され、主に揖斐線や谷汲線で運用されました。改造後の客用扉下部には新たに内蔵ステップが設置され、その後もさまざまな改良が施されました。

1970年代以降、揖斐線での従来車両の淘汰が進む中、ク2180形も対象となり、1973年に編成を失って除籍されました。残存していたク2181も1978年には運用から外れ、形式が消滅しました。ク2182は廃車後も残され、倉庫として利用されましたが、1995年頃にはその役目を終えました。

結論

名鉄ク2180形電車は、戦時中に対応するために設計された特異な背景を持つ電車であり、時代に応じて改造や運用形態を変えてきました。その独自の経緯や仕様は、鉄道ファンにとっても興味深い存在となっています。

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