名鉄デキ850形電気機関車

名鉄デキ850形電気機関車

名鉄デキ850形電気機関車は、かつて名古屋鉄道のために製造された直流用の電気機関車であり、後に豊橋鉄道に引き継がれました。この車両は、戦後の貨物輸送増加に対応するために設計・製造されたものです。基本的には架線電圧600Vの線区専用であり、1両（851）が存在しました。

開発背景と製造

太平洋戦争の影響によって、名古屋鉄道では貨物輸送量が大幅に増加しましたが、それに伴って電気機関車の不足が深刻になりました。この不足を解消するため、電車や電動貨車の余剰パーツを利用して新たに電気機関車を製造する計画が立てられました。名鉄デキ850形は、1944年に名古屋鉄道の新川工場で製造されたもので、主に600V線区での使用を目的とした凸字形の電気機関車です。

車両は木製で、日本車輌製のC-12台車と、イギリスのブリティッシュ・ウェスティングハウス社製のEC221電動機が搭載されていました。しかし、1952年には主電動機がウェスティングハウス・エレクトリック社製の516-Jに換装されました。

運用と譲渡

デキ850形は、まず名古屋鉄道の西部線600V線区で運用され、その後渥美線に転籍しました。そして、1954年に渥美線が豊橋鉄道に譲渡される際に、851号車も同様に豊橋鉄道に引き継がれ、元の形式および番号のままで運行されました。

老朽化と廃車

しかし、デキ850形は木造の車体ということもあり、さらに戦時中に使用された劣悪な部材と設計による影響で老朽化が急速に進行しました。このため、1966年3月12日に廃車となりました。廃車後は車体が解体されましたが、台車についてはデキ200形電気機関車に転用され、別の形で余生を送ることとなりました。

参考文献

• - 『鉄道ピクトリアル』62巻（通巻859号（2012年2月号））、電気車研究会
• - 清水武、田中義人『名古屋鉄道車両史 上巻』、アルファベータブックス、2019年。
• - 小寺幹久『名鉄電車ヒストリー』、天夢人、2021年。
• - 清水武、田中義人、澤内一晃『名古屋鉄道の貨物輸送』、フォト・パブリッシング、2021年。

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