名鉄モ590形電車

名鉄モ590形電車について

名鉄モ590形電車は、名古屋鉄道（名鉄）がかつて保有していた路面電車で、1957年に登場しました。この車両は、岐阜市内線や美濃町線などで長く愛用され、2005年まで運行されていました。しかし、路線の廃止に伴い、土佐電気鉄道（現在のとさでん交通）へと譲渡され、同社の590形として運用が開始されました。

車両の概要

モ590形は、1957年4月から11月にかけて、モ591からモ595の5両が日本車輌製造で製造されました。基本的な設計は前年に登場したモ580形を踏襲していますが、いくつかの点で近代的な特徴が見られます。たとえば、側窓の枠が細く設計された鉄製サッシとなり、窓のサイズも拡大。また、鋼製扉が採用されており、全体的に現代的な外観を持っています。

車内はロングシート仕様で、蛍光灯による室内照明が導入されていました。主要な機器は、部品の多くがミニマムアップグレードを経て、出力45kWの東洋電機製造製の電動機が2基搭載され、台車には住友金属工業製の一体鋳鋼型が使用されていました。また、集電装置は新たにパンタグラフが採用されました。

運用の流れ

モ590形電車は、初めのうちは岐阜市内線で使用されていましたが、モ591は1968年以降、美濃町線で運用されることとなりました。1971年までに他の4両も美濃町線に転属し、同時に歯車比の変更も行われ、高速運転に対応しました。行先表示は、初期には幕式が用いられていましたが、数年後には表示板による表示に切り替わりました。

美濃町線の運用が新岐阜を発着する形に変更されると、モ590形の使用頻度は減少し、1981年からはモ593から595が休車に入りました。1983年には、ワンマン運転が導入され、モ591とモ592に加え、休車中のモ593も改造が施されました。この時期、他形式と異なり、正面の行先表示窓に「ワンマンカー」の表示が掲出されたのが特徴的です。

後世の経緯

1999年には、サービス向上策としてモ592が冷房化改造を受け、さらに2000年にモ591も同様の改造が施されました。冷房装置としては三菱電機製が用いられ、屋根に搭載された静止形インバータが必要な電源を供給しました。美濃町線の全線廃止が決定した2004年に、モ593はクリーム色と緑色の塗装に変更されるとともに、2005年3月31日には全車が廃車となりました。

土佐電気鉄道への譲渡

モ591とモ592は廃車後、土佐電気鉄道に譲渡され、590形として新たな運用が始まりました。入線時にはLED表示機への改造や、客用扉の数が変更されたりするなどの改良が施されました。譲渡された際の塗装は、名鉄時代のスカーレット一色のままとされており、この地味な外観が際立つ存在感を持つこととなりました。

全体として、名鉄モ590形電車は、美濃町線の地域交通を支えた名列車の一つであり、現在もとさでん交通で活躍しています。

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