静止形インバータ

静止形インバータ（SIV）

静止形インバータ、また略称のSIV（Static InVerter）は、鉄道車両において主に補助電源供給を行うための装置です。高電圧の直流および交流を、12Vから440Vの低圧電源に変換し、車両内の様々な機器に電力を供給します。鉄道における重要な役割を担っており、架線から得られる高電圧電源を制御装置、空調装置、空気圧縮装置、旅客用サービス機器などに適切な電圧に変換して提供します。

概要

静止形インバータは、固定された電圧と周波数を出力します。鉄道車両では、走行に用いるVVVFインバータとは異なり、補助電源装置として機能します。このため、その特性から「静止形」と呼ばれ、一般的に「CVCFインバータ」（Constant Voltage Constant Frequency：定電圧定周波数制御）として位置付けられています。これに対して、鉄道車両の走行用に用いられるVVVFインバータは可変制御が行われます。

1970年代以前は、電動発電機を主流としていましたが、この機械には騒音や保守が必要という欠点がありました。しかし、半導体技術の進歩に伴い、静止形インバータが開発され、広く普及しました。

歴史

静止形インバータの歴史は、1968年に神戸電鉄と都営地下鉄で初めて採用されたことから始まります。以降、名古屋市交通局や大阪市交通局などでも導入が進みました。1980年代後半からは、半導体技術の進化により、GTO素子からIGBT素子が主流となり、さらにはSiC素子を使用した製品も出回るようになりました。

原理

静止形インバータの基本的な動作原理はスイッチング電源と類似しています。直流入力がPWM（パルス幅変調）によって変換され、その後、リアクトルとコンデンサにより平滑化され、商用周波数に近い交流出力が得られます。この出力電力は、変圧器を介して必要な電圧に変換され、列車内の様々な機器に供給されます。

動作方式

さまざまな製造メーカーが静止形インバータの回路を開発しており、その設計は多種多様です。特に、複数のインバータ1台を使用することや、VVVFインバータをSIVとして動作させるシステム（デュアルモードインバータ）の設計が一般的です。これにより、1台のインバータが故障した場合でも、冗長性が確保されているのです。電気的な冗長機能は「受給電」または「電源誘導」と呼ばれ、運行の安定を支えています。

DC-DCコンバータ方式

静止形インバータから派生した形式としてDC-DCコンバータも存在します。これは、交流から直流へ、あるいは逆の変換を行うもので、空調装置においても利用されていて、効率的な電力供給が行われます。

交流型電車への適用

交流型電車でも静止形インバータは使用されており、主変圧器の交流を補助装置に供給します。初めて採用された例としては、新幹線と在来線電車があり、広くその利点が生かされています。

機関車での導入

静止形インバータは、電気機関車にも適用され、効率的な運用を実現しています。特に1996年に製造されたEF210形電気機関車では、静止形インバータが採用され、以降の機関車標準となっています。これにより、運行の安定性と効率性が向上されています。

まとめ

静止形インバータは、鉄道車両における重要な補助電源装置であり、その効率的な運用は、安全で快適な乗客体験を提供するために欠かせません。多様な技術と設計が適用され、今後も進化が期待されます。静止形インバータの発展は、鉄道業界全体において重要な役割を果たし続けるでしょう。

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