名鉄9500系電車

名鉄9500系電車

名鉄9500系電車は、名古屋鉄道が2019年12月から運用を開始した通勤形電車です。ここでは、4両編成の9500系に加え、同一設計の2両編成である9100系についても解説します。

概要

9500系は、名鉄にとって2008年の4000系以来、11年ぶりの新型車両です。名鉄の通勤形電車としては初めて防犯カメラとWi-Fi設備が搭載されました。なお、Wi-Fi設備は2023年3月までに撤去されています。

導入経緯

9500系は、老朽化した5700系や6000系などの置き換えを目的に製造されました。車両の構造は3300系に準拠しつつ、時代のニーズに合わせた改良が加えられています。2019年度には4両編成のみが製造されましたが、先頭車2両による2両編成の構成も考慮されており、2020年度には2両編成版の9100系が登場しています。

車体構造

外観

9500系は、片側3扉のステンレス製車両で、日本車輌製造の日車式ブロック工法が採用されています。先頭部は普通鋼製で、衝突安全性とメンテナンス性が向上しています。車体にはレーザー溶接が用いられ、外板の歪みが少なく美しい仕上がりです。

乗降扉は幅1,300mmの両開き式で、開閉時にはLED式の車側灯が点灯します。戸閉装置は電気式ドアエンジンを採用し、戸閉保安機能と戸挟み検知機能を備えています。また、車内保温のためのドアカット機能も搭載されています。

前面および側面に備える行先表示器はフルカラーLED式です。先頭部にはM式自動解結装置付の自動密着連結器を備えています。スカーレット塗装は、3300系の2015年度以降製造編成と同様に、車体前面下部やスカートにも施されています。

前照灯は横8粒のLED照明を縦3段に配置したデザインで、減光時には上段のみが点灯します。パンタグラフはシングルアーム式のPT7118-Bで、動力車に各1基搭載されています。

台車はボルスタ付き台車を採用しており、制御機器にはVVVFインバータ制御機器の半導体素子にSiCが採用されています。

内装

座席はオールロングシートで、扉間が8人掛、連結部寄りが5人掛、運転室寄りおよびフリースペース部は2人掛となっています。8人掛と5人掛の座席は、スタンションポールによって区切られています。モケットはクロスチェック柄で、一般席は青、優先席は赤を基調としています。室内はベージュを多用し、落ち着いた空間を演出しています。

全車両にフリースペースと優先席エリアが設けられています。フリースペースには車椅子固定ベルト、パネルヒーター、手すり、腰当が設置されています。優先席エリアは、座席の他に床や吊り手の配色を変えることで区画を明確化しています。吊り手の高さは1,580mm、荷棚の高さは1,750mmと、小柄な利用客にも配慮した設計です。

各扉上にはLED式の扉開閉動作表示灯が取り付けられており、開閉のタイミングで点灯します。扉上部には車内案内表示装置と防犯カメラが千鳥配置されています。車内案内表示装置は17インチLCD画面によるトレインビジョンで、日本語、英語、中国語、朝鮮語の4カ国語に対応しています。

登場時は公衆無線LANサービス「MEITETSU FREE Wi-Fi」が提供されていましたが、2023年3月1日より特急の特別車のみのサービスとなりました。

9100系全編成と9500系の一部編成には、扉開閉時の注意喚起を行う自動放送ボタンが設置されています。また、将来のワンマン運転を見据え、ワンマン運転機器を設置できるよう準備工事が施されている編成も存在します。2023年度増備車からは、非常用設備の設置位置や使用方法に関する表示が変更されています。

沿革

2019年3月に9500系の導入が発表され、同年7月から11月にかけて甲種輸送が行われました。営業運転開始は12月で、各種試験を経て運用を開始しました。この導入により、5700・5300系の残存編成は全て廃車となりました。

2020年には9500系の2次車が落成し、2両編成の9100系の製造も開始されました。9100系は2021年1月より営業運転を開始しています。

2021年にも9500系と9100系の増備が行われ、2023年3月と2024年3月のダイヤ改正で、各務原線、知多新線、広見線、築港線でワンマン運転が開始されました。2024年度には、貫通扉を中央に配置した編成が新造される予定です。

9500系と9100系は、名鉄の通勤輸送を支える主力車両として、今後ますます活躍していくことが期待されます。

もう一度検索