大部屋俳優

大部屋俳優とは

大部屋俳優とは、主に演劇や映画の世界で、主役や主要な役柄以外の役を演じる俳優のことを指します。彼らは物語を彩る上で欠かせない存在であり、作品を支える重要な役割を担っています。この言葉は、もともと歌舞伎の世界に由来しており、身分制度の中で、楽屋が与えられない役者が共同で使う大部屋から来ています。

歌舞伎における大部屋俳優

江戸時代の歌舞伎界では、役者の身分制度が厳格に定められていました。主役級の役を演じる「名題（なだい）」と呼ばれる役者の下には、「相中（あいちゅう）」、「中通り（ちゅうどおり）」、「下立役（したたちやく）」といった身分があり、名題以外の役者は、楽屋の三階に設けられた板の間で雑居していました。これが「大部屋」の語源です。彼らは「三階」、「三階さん」とも呼ばれましたが、最下層の下立役は実際には一階に部屋がありました。この身分制度は明治末期まで残っていたとされています。

映画界における大部屋俳優

映画界でも大部屋俳優は重要な役割を担っています。彼らは、主役級の俳優と同様に映画会社と契約を結びますが、その契約形態は大きく異なります。1960年代頃までは、主役級の俳優は出演本数に応じた出演料が支払われるのに対し、大部屋俳優は定額の月給制で、危険な演技や特別な仕事に対して手当が支払われるという形式でした。例えば、東宝では、主役級の俳優を「Aホーム」、大部屋俳優を「Bホーム」と区別し、さらにエキストラやスタントを行う者は「B2」と分類していました。

東映京都撮影所では、大部屋俳優は撮影所契約の月給制でしたが、会社に認められて本社契約を結ぶと、年6本の映画出演契約と高額なギャラが保証される制度がありました。大部屋に所属する俳優の数は、数十人から100人以上に及ぶこともありました。1990年代の松竹京都撮影所では、男性用4畳半ほどの部屋3室と女性用部屋1室に20人ほどが共同生活をしていたそうです。

東映では、2018年に大部屋にあたる「俳優事務所」を統合し、殺陣のパフォーマンスを行う者を含めて180人ほどの俳優が所属しています。

大部屋俳優の仕事とキャリア

大部屋俳優の仕事は、端役を演じたり、時にはエキストラとしてクレジットされないこともあります。多くの場合、彼らは俳優としての一本立ちを目指す比較的若い人たちですが、中には山内八郎、加藤茂雄、福本清三、小峰隆司のように、ベテランになっても大部屋で活躍し、その名を知られるようになった人もいます。また、怪獣映画などのスーツアクターも、大部屋俳優が務めることがあり、初代ゴジラのスーツアクターである中島春雄もその一人です。

大部屋出身の俳優

大部屋出身であることは、しばしば話題にされることがあります。以下にその例を挙げます。

石倉三郎
川谷拓三
志賀勝
谷よしの
土平ドンペイ

大部屋俳優の存在は、映画や演劇の世界を支える重要な要素であり、彼らの努力と才能が、作品に深みとリアリティを与えています。

関連情報

ピラニア軍団
深作欣二
ダイアン - ユースケの持ちネタに、岸大介という架空の大部屋俳優を演じるものがあります。

もう一度検索