向嶽寺

向嶽寺 (こうがくじ)

向嶽寺は山梨県甲州市に立地する禅寺で、臨済宗向嶽寺派の大本山として知られています。山号は塩山で、本尊は釈迦如来です。残念ながら、向嶽寺は非公開の寺院のため、建物の内部や庭園を直接見学することは一般の参拝者にはできません。

歴史

向嶽寺の歴史は南北朝時代の1378年から始まります。この年、抜隊得勝（ばっすいとくしょう）が甲州塩山に草庵を建設したことがその起源です。抜隊は相模国からの移住を望んでおり、弟子である松嶺昌秀の運営により、2年後には甲斐国守護の武田信成から寄進された塩ノ山へと移転しました。ここで寺は「向嶽庵」と名付けられました。信成は寺領の絵図を作成し、本尊の釈迦如来像を寄進したとされています。

この寺は南朝との深い関わりがあり、後亀山天皇の勅願寺となったことでも知られています。武田氏の支援も受け、多くの塔頭や末寺を抱えていました。しかし、室町時代中期に入ると、甲斐の守護である武田信昌の子、信縄と油川信恵の抗争が発生し、向嶽寺の領地が横領されるといった苦難も経験しました。横領問題は1499年に和解が成立し、その後、信長によって横領文書が還付されました。

江戸時代には末寺の離れが相次ぎ、火災によって数回喜多村し、復興を余儀なくされました。1876年に南禅寺派に属した後、1908年には臨済宗向嶽寺派として独立しました。1926年の火災では方丈と庫裏を焼失しましたが、1967年には庫裏が再建されました。

文化財

向嶽寺は数多くの文化財を有し、その中でも特に目を引くのが国宝に指定されている「絹本著色達磨図」です。鎌倉時代製作のこの達磨図は、日本水墨画史の中での重要な作品とされており、ひどく精緻に達磨の姿が描かれています。現在は東京国立博物館に寄託されています。

加えて、重要文化財として向嶽寺の中門や、絹本著色三光国師像、大円禅師像などが指定されています。向嶽寺の文書も多く保管されており、特に歴史的価値のある「向嶽寺文書」には中世の重要な記録が含まれています。これにより、武田氏との関わりや地域の歴史についての理解が深まります。

また、江戸初期に造られた庭園も名勝に指定されており、向嶽寺の山裾に位置するこの庭は、その美しい石組みが評判です。発掘調査により庭園の古い構造が確認され、修復工事が行われました。これは、山梨県における古い名園の一つとして位置づけられています。

所在地

向嶽寺は、山梨県甲州市塩山上於曽2026に位置しています。ここに訪れることで、長い歴史と深い文化を持つ寺院の重要性を感じることができるでしょう。浸透した禅の精神を感じながら、静かな環境でのひと時を過ごすことができる場所です。

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