向日性

向日性（こうじつせい）とは

向日性とは、植物が太陽の動きに追従して、花や葉の向きを変化させる現象を指します。これは植物の屈性の一種であり、太陽光を最大限に活用するための重要な適応戦略です。古代ギリシャ時代からこの現象は知られており、当初は光による受動的な反応と考えられていましたが、19世紀以降の研究で、より複雑なメカニズムが明らかになってきました。

向日性の歴史

古代ギリシャでは、太陽の動きに合わせて動く植物を「太陽の回転」を意味する「Heliotropium」と名付けました。しかし、当時は植物が受動的な生物であるという考えが主流であり、詳細な研究は進みませんでした。19世紀になると、植物学者は植物の成長プロセスの複雑さを認識し、オーギュスタン・ピラミュ・ドゥ・カンドールがこの現象を「heliotropism」と名付けました。その後、「光屈性」という言葉も使われるようになりましたが、これは太陽光だけでなく、光全般に対する反応であるためです。

花の向日性

花の向日性は、花が太陽の動きを追うように動く現象です。例えば、ヒナギクは朝に花を開き、太陽の動きに合わせて花弁を動かします。夜には花弁を閉じ、翌朝再び太陽を追います。この動きは、花の直下にある葉枕という特殊な細胞によって制御されています。葉枕細胞はカリウムイオンの移動により膨圧を変化させ、花の位置を調整します。これは膨圧を介した向日性の一例です。また、葉枕を持たない器官では、細胞増殖を介した向日性が見られることもあります。

花の向日性にはいくつかの仮説があります。

送粉者誘引仮説：花が太陽光を浴びて暖かくなることで、送粉者を誘引するという説
成長促進仮説：太陽光を効率的に吸収することで、花粉の発芽や成長を促進するという説
冷却仮説：熱い気候下で花が過熱するのを防ぐために、太陽光に対する位置を調整するという説

これらの仮説を総合的に考えると、花の向日性は、受粉や種子形成を促進し、繁殖の成功を高めるのに役立っていると考えられます。

ただし、すべての植物が正確に太陽を追跡するわけではありません。一部の植物では、光による概日運動が関与しており、太陽の動きに似た動きをしますが、光のサイクルが途絶えても一定期間動き続けることがあります。また、熱帯のヒルガオ科の花は、太陽光を浴びる方向を好みますが、正確に追跡するわけではありません。これは、太陽光が花筒に直接当たり過ぎると、雌蕊が過熱する危険性があるためです。これらの花は、太陽光が最も強くなる時間帯にパラソルのように機能し、雌蕊を保護しています。

ヒマワリの向日性

ヒマワリは向日性の代表的な例として知られていますが、花が常に太陽を追跡するというのは誤解です。ヒマワリの蕾は、成長段階では太陽を追跡しますが、花が開花すると東を向いたまま動かなくなります。蕾の向日性は、茎の先端部分の成長によって起こります。幼苗の胚軸では光屈性による屈曲が起こり、植物の成長後期になると、茎の先端部分が向日性屈曲を示すようになります。ヒマワリの花が開花後も東を向いているのは、この蕾の時の向日性の結果なのです。

葉の向日性

葉の向日性は、葉が太陽を追跡するように動く現象です。朝に太陽光に対し垂直になるように葉を動かす植物（Diaheliotropism）もあれば、日中に太陽光に平行になるように葉を動かす植物（Paraheliotropism）もあります。花の向日性を示す植物でも、葉の向日性を示すとは限りません。

まとめ

向日性は、植物が太陽光を最大限に活用するための、重要な適応戦略です。花や葉の動きは、それぞれ異なるメカニズムで制御されており、受粉、種子形成、光合成など、植物の生存にとって重要な役割を果たしています。今後も、向日性のメカニズムや、植物の成長における役割についての研究が進むことが期待されます。

参考資料

Animation of Heliotropic Leaf Movements in Plants
24-hour heliotropism of Arctic poppy exposed to midnight sun
Stempscope 2.2, Growth of Organs

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