君こそわが命

君こそわが命

「君こそわが命」（きみこそわがいのち）は、日本の歌手、水原弘が1967年2月に発表したシングル楽曲であり、彼のキャリアにおいて最もよく知られる代表曲の一つです。作詞は川内康範、作曲は猪俣公章が手がけました。

背景と「奇跡のカムバック」

水原弘は、1959年のデビュー曲「黒い花びら」で第1回日本レコード大賞を受賞するなど華々しいキャリアのスタートを切りましたが、その後は私生活の問題などから表舞台での活動が減り、借金や病気を抱えるなど苦難の時期を過ごしていました。

そうした状況の中、「君こそわが命」は水原弘にとってまさに起死回生の一曲となりました。この楽曲が社会現象ともいえる大ヒットを記録したことで、彼は再び脚光を浴び、「奇跡のカムバック」と称されました。1968年時点での累計売上は165万枚を超え、当時の人気ぶりを示しています。

しかし、この華やかな復活も長くは続かず、水原弘の私生活、特に飲酒の問題は改善されなかったと言われています。そして、「君こそわが命」のヒットから11年後の1978年6月、水原弘は北九州市内の宿泊先で倒れ、翌7月に42歳で死去しました。大ヒット曲での復活と、その後の短い生涯は、彼の波乱に満ちた人生を象徴するものとして語られています。

NHK紅白歌合戦での歌唱

「君こそわが命」のヒットは、水原弘を再び音楽番組の主役へと押し上げました。彼は1967年末の第18回NHK紅白歌合戦に、実に5年ぶりとなる4回目の出場を果たします。これを皮切りに、1973年の第24回まで7年連続で紅白の舞台に立ち続けました。

この楽曲自体も紅白歌合戦において重要な存在でした。水原弘は初出場となった1967年の第18回に加え、1969年の第20回、そして生涯最後の紅白出場となった1973年の第24回大会でも「君こそわが命」を歌唱しており、通算3回にわたって紅白の舞台で披露されました。

競作と一般的な認知

本楽曲はリリース当初、水原弘のバージョンと佳川ヨコのバージョンが同時に発売される競作として展開されました。しかし、市場における反応は水原弘盤が圧倒的に優位であり、その後の売上も大きく差をつけました。この結果、現在においても「君こそわが命」といえば、広く一般的に水原弘の代表曲として認識されています。

シングル収録曲

1967年2月にリリースされたシングル盤には、以下の2曲が収録されています。

君こそわが命
作詞: 川内康範
作曲・編曲: 猪俣公章
沈黙のブルース
作詞: 川内康範
作曲・編曲: 猪俣公章

主なカバーバージョン

「君こそわが命」は、多くのアーティストによってカバーされています。代表的なカバーは以下の通りです。

美空ひばり - アルバム『歌謡曲50年（第13集）』に収録。
石原裕次郎 - アルバム『愛唱歌・ベスト40』に収録。
藤圭子 - 1973年発表のアルバムに収録。
杉良太郎 - 2006年にシングルとしてもリリース。
北山たけし - 2006年発表のアルバムに収録。
氷川きよし - 2013年発表のアルバムに収録。
* 高杉俊介 - この曲のカバーで第17回横浜音楽祭新人賞を受賞。

これらのカバーは、世代やジャンルを超えてこの楽曲が愛され続けている証と言えるでしょう。

「君こそわが命」は、水原弘のキャリアにおける最も輝かしい瞬間の一つを飾ると同時に、その後の人生との対比においても深く印象に残る楽曲として、日本の歌謡史において重要な位置を占めています。

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