呂六十型潜水艦

呂六十型潜水艦（ろろくじゅうがたせんすいかん）

呂六十型潜水艦は、日本海軍がL型潜水艦の最終型として建造した艦級で、L4型とも称されます。L3型潜水艦をベースに全面的に設計が見直され、艦体は拡大し、上部構造物の幅も広げられました。攻撃力の強化として、魚雷発射管は従来の4門から6門へと増加しています。これらの改良により、基準排水量は約100トン増加しましたが、トレードオフとして速力は低下しました。

本型は1923年（大正12年）から1927年（昭和2年）にかけての4年間で、全9隻が三菱神戸造船所にて竣工しました。完成後、各艦は佐世保鎮守府を拠点とする潜水隊に編入されました。1924年（大正13年）11月1日には、全艦の名称が「呂号第～潜水艦」と改められています。

太平洋戦争が勃発すると、呂六十型潜水艦は主に中部太平洋や北方海域での監視や哨戒任務に従事しました。しかし、主任務が哨戒や警備であったため、敵艦船を積極的に攻撃し、大きな戦果を挙げる機会はほとんどありませんでした。大戦が後半に進むにつれて、本型は練習潜水艦としての役割を担うことが多くなりました。限られた戦力の中、後進の潜水艦乗員の育成に貢献したのです。

戦争の激化とともに、呂六十型潜水艦はその数を減らしていきました。合計で5隻が戦没し、その原因は座礁、敵駆逐艦による攻撃、触雷、事故、空襲による損傷など多岐にわたります。具体的には、呂60がクェゼリンで座礁放棄（1942年）、呂61がアリューシャン列島沖で沈没（1942年）、呂64が広島湾で触雷沈没（1945年）、呂65がキスカ島で事故沈没（1942年）、呂66がウェーク島沖で呂62との衝突事故により沈没（1941年）しています。終戦時に残存していた呂62、呂63、呂67（除籍済み）、呂68の計4隻は、戦後、アメリカ軍によって海没処分されました。

同型艦

全9隻が三菱神戸で建造されました。

呂号第六十潜水艦: 1923年竣工。1942年、クェゼリンで座礁し船体放棄。
呂号第六十一潜水艦: 1924年竣工。1942年、アリューシャン列島アトカ島沖で米駆逐艦の攻撃により沈没。
呂号第六十二潜水艦: 1924年竣工。終戦時舞鶴に所在。1946年、伊予灘にて海没処分。
呂号第六十三潜水艦: 1924年竣工。終戦時舞鶴に所在。1946年、伊予灘にて海没処分。
呂号第六十四潜水艦: 1925年竣工。1945年、広島湾で触雷により沈没。
呂号第六十五潜水艦: 1926年竣工。1942年、キスカ島にて事故により沈没。
呂号第六十六潜水艦: 1927年竣工。1941年、ウェーク島沖で呂62との衝突事故により沈没。
呂号第六十七潜水艦: 1926年竣工。1945年、老朽化と空爆による損傷甚だしく除籍。
* 呂号第六十八潜水艦: 1925年竣工。終戦時舞鶴に所在。1946年、若狭湾にて海没処分。

潜水隊としての活動

呂六十型潜水艦9隻は、当初佐世保鎮守府に配備され、第26潜水隊（呂60, 呂61, 呂62）、第27潜水隊（呂65, 呂66, 呂67）、第24潜水隊（呂63, 呂64, 呂68）の3個潜水隊を編成しました。これらの部隊は、主に訓練や沿岸警備に従事しました。

太平洋戦争開戦前の1939年には、第24潜水隊が解隊され、所属艦は舞鶴鎮守府へ移籍。ここで第33潜水隊として再編成され、当初は練習艦としての役割が期待されましたが、後に潜水学校の練習艦として呉鎮守府へ転属しました。

戦争が始まると、残る第26潜水隊、第27潜水隊、そして再編成された第33潜水隊は、それぞれ中部太平洋や北方海域へ進出し、哨戒任務に投入されました。

しかし、第27潜水隊は開戦直後の1941年12月に呂66が事故で沈没したこともあり、翌1942年2月には解隊され、残存艦は第26潜水隊に編入されました。第26潜水隊も所属艦の戦没などにより戦力が低下し、1943年12月に解隊。その残存艦は第33潜水隊へ編入されました。

最終的に、第33潜水隊は呂六十型を基幹としつつ、戦争後期には他の艦型（呂49、呂109、呂112、伊号、波号など）の潜水艦も練習艦や回航要員養成のために多数編入・転出を繰り返す混成部隊となりました。この第33潜水隊は、終戦直後の1945年9月2日に解隊されるまで、主に潜水艦乗員の訓練を担いました。

このように、呂六十型潜水艦は就役から終戦に至るまで、時代と戦況に合わせてその役割を変えながら、日本海軍の潜水艦戦力の一翼を担いました。

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