呉の滅亡 (三国)

呉の滅亡：三国時代の終焉と中国統一

呉の滅亡は、西晋が呉を滅ぼし、長きにわたる分裂の時代に終止符を打ち、中国を再統一した歴史的出来事です。西晋の元号にちなみ、「太康の役」とも呼ばれています。この戦いは、三国時代の最終局面を飾り、その後の中国史に大きな影響を与えました。

晋王朝の成立と呉攻略の準備

魏の実権を掌握した司馬昭は、蜀漢を滅ぼした後、265年に亡くなります。その後、息子の司馬炎（後の武帝）が権力を引き継ぎ、魏の皇帝から禅譲を受けて晋王朝を樹立しました。司馬炎は中国統一を目指し、呉への攻略を着々と準備していきます。

しかし、呉も黙って見ていたわけではありません。孫権の晩年からの後継者争いで国力が低下していましたが、蜀漢の滅亡後、皇帝となった孫晧は、晋への対応を迫られます。当初は晋に下手に出ていましたが、次第に外交を打ち切り、北伐を企図するようになります。しかし、その内政は乱れており、暴政と奢侈により民衆の不満は高まっていました。

司馬炎は、呉の混乱に乗じて、着々と攻略の準備を進めます。羊祜を荊州に、衛瓘を青州に、司馬伷を揚州に配置し、それぞれ軍事力の増強と民心の掌握に努めました。特に羊祜は、呉の民衆からの信頼を得ることに成功し、後の攻略戦で大きな役割を果たします。また、王濬に命じて大型船を建造させ、強大な水軍を育成しました。こうして、晋は万全の態勢で呉攻略に臨むことになります。

攻略開始と天下統一

279年、杜預が呉の西陵督を破ったのを機に、司馬炎は呉討伐を決意します。賈充を大都督に任命し、総勢20万以上の軍勢を6方向から呉に侵攻させました。王濬率いる水軍は長江を下り、他の部隊も各地で呉軍を破り、着実に進軍していきます。

呉軍は長江に鉄鎖を設置するなどして抵抗を試みますが、晋軍の勢いを止めることはできませんでした。王濬は鉄鎖を破壊し、次々と拠点を攻略していきます。一方、孫晧は丞相の張悌に迎撃を命じますが、張悌は晋軍に大敗し、多くの将兵が命を落としました。この敗戦により、呉の士気は大きく低下し、降伏する兵士が続出します。

280年3月、王濬軍はついに呉の都である建業に到達します。もはや抵抗する力を持たない孫晧は、降伏を決意し、晋軍に身を委ねました。これにより、後漢末から続いた群雄割拠の時代は終わりを告げ、中国は再び統一国家として歩み始めることになります。

呉の滅亡がもたらした影響

呉の滅亡は、単に一つの王朝が滅びたという以上の意味を持ちます。それは、長きにわたる戦乱の時代に終止符を打ち、中国に平和と安定をもたらす転換点となりました。司馬炎は、呉の旧臣を寛大に扱い、民衆の負担を軽減することで、統一国家の基盤を固めました。しかし、その後の西晋は、内紛や異民族の侵入により衰退し、再び分裂の時代を迎えることになります。それでも、呉の滅亡によって実現した一時的な統一は、その後の中国史において重要な意味を持つ出来事として記憶されています。

呉の滅亡は、戦略、政治、そして人々の運命が複雑に絡み合った、中国史における重要な転換点と言えるでしょう。

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