衛瓘

衛瓘（えいかん）

衛瓘（220年 - 291年）は、三国時代から西晋にかけて活躍した政治家であり軍人です。字（あざな）は伯玉（はくぎょく）。父は魏の尚書令を務めた衛覬（いき）。

生涯

若き日

10歳で父を亡くした後、母に孝養を尽くしました。父の爵位を継ぎ、尚書郎となります。厳しい法に苦しむ民を案じ、自ら願い出て通事郎、中書郎と職を移りました。権力者と距離を置き、傅嘏（ふか）に才能を認められています。10年間中書郎を務め、散騎常侍に昇進しました。

260年、曹奐（そうかん）の即位に伴い、侍中を拝命、河北の慰労に尽力し、食邑を加増されました。その後、廷尉卿に移り、法理に基づき公平な裁判を行ったとされています。

蜀漢征伐

263年、蜀漢征伐において、鄧艾（とうがい）と鍾会（しょうかい）の軍を監査する役目を担いました。鍾会が鄧艾を陥れようとすると、衛瓘もそれに同意し、鄧艾捕縛の詔を引き出します。身の危険を感じた衛瓘は鄧艾軍の将を掌握し、鄧艾父子を捕縛することに成功しました。

その後、鍾会が反乱を起こすと、これを鎮圧。しかし、鄧艾の部下が鄧艾を奪還しようとすると、田続（でんぞく）を利用して鄧艾父子を殺害しました。この功績は評価されたものの、その非情な手段は世間から非難を浴びることとなりました。

西晋黎明期

265年、西晋が成立すると、司馬炎（しばえん）に重用され、征東将軍に任じられます。その後、青州、幽州の刺史を歴任し、異民族対策に尽力しました。烏桓（うがん）と拓跋（たくばつ）を懐柔し、特に拓跋に対しては、内部対立を誘う工作を行い、勢力削減に成功しました。

278年、洛陽に召喚され、尚書令・侍中を歴任しました。

統一後の栄進

283年、司空に昇進し、その清廉な政治手腕で名声を博しました。司馬炎の娘である繁昌公主（はんじょうこうしゅ）を四男の衛宣（えいせん）に娶らせるなど、司馬炎からの信任は厚いものでした。九品官人法の廃止を主張しましたが、容れられませんでした。皇太子司馬衷（しばちゅう）の暗愚さを憂い、司馬炎に廃嫡を勧めたことが、後に禍根を残すことになります。

武帝の晩年には、楊駿（ようしゅん）が権勢を振るいましたが、衛瓘は疎まれていました。楊駿は衛瓘を失脚させるために衛宣を弾劾し、繁昌公主と離婚させました。衛瓘は政務から退き、太保となりました。

賈南風との対立と最期

290年、司馬炎が崩御し、司馬衷が即位すると、衛瓘は復職し、司馬亮（しばりょう）と共に政治を補佐しました。しかし、楊駿誅殺に加担した司馬瑋（しばい）を警戒し、その権力を削ごうとしたことが、司馬瑋らの怒りを買います。賈南風（かなんふう）は、司馬亮と衛瓘が皇帝を廃立しようとしているという讒言を信じ、司馬瑋と結託して二人を排除することを決意しました。

291年、賈南風は恵帝に偽の詔を出させ、司馬瑋に司馬亮と衛瓘の逮捕を命じました。衛瓘は逮捕を受け入れ、司馬亮と共に殺害されました。衛瓘の死後、娘が朝廷に訴え、名誉が回復され、蘭陵郡公（らんりょうこう）の爵位が追贈されました。

逸話

鄧艾を讒言したことについて、杜預（どよ）から痛烈に批判されたという逸話が残っています。

子孫

多くの子と孫がおり、書家の衛鑠（えいしゃく）は親族にあたるとされています。

参考文献

『晋書』巻36 列伝第6
『資治通鑑』巻78 - 巻82

関連項目

蜀漢の滅亡
八王の乱

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