司馬伷

司馬伷（しば ちゅう）：西晋の礎を築いた名将、しかし子孫は乱の種に

司馬伷（しば ちゅう、字は子将）は、三国時代の魏から西晋にかけて活躍した武将です。司馬懿の四男として生まれ、その才能と功績で西晋の成立に貢献しました。しかし、彼の子孫たちは「八王の乱」と呼ばれる内乱に関与し、西晋を滅亡へと導く一因となりました。

生涯

司馬伷は幼い頃から才能を発揮し、名声を得ていました。魏の時代には南安亭侯に封じられ、寧朔将軍として各地を転戦。特に鄴城の監督官としては、その優れた統治手腕を発揮し、人々から高く評価されました。

260年、魏の皇帝曹髦が司馬昭の排斥を試みる「甘露の変」が発生。司馬伷は屯騎校尉として曹髦を迎え撃ちましたが、曹髦の気迫に押され、軍勢は崩壊してしまいます。しかし、その後も司馬伷は散騎常侍、右将軍、兗州刺史などの要職を歴任し、着実にその地位を固めていきました。

265年、司馬炎（司馬昭の子）が晋を建国すると、司馬伷は東莞郡王に封じられ、広大な領地を与えられました。その後も尚書右僕射、撫軍将軍などの要職を歴任し、晋王朝の安定に貢献しました。

269年には、鎮東大将軍として徐州の守備を任され、呉の侵攻を食い止めました。その卓越した軍事的手腕は呉を大いに恐れさせたといいます。また、石苞の反乱計画が発覚した際には、寿春へ急行し、反乱を未然に防ぐという功績も残しました。

279年、呉討伐戦では数万の兵を率いて進軍し、呉の皇帝孫皓を降伏させました。この功績により、司馬伷は大将軍に昇進。しかし、彼は決して驕ることなく、常に謙虚な姿勢を保ち続けたため、部下からの信頼も厚く、民衆からも慕われました。

283年、司馬伷は57歳で亡くなりました。生前、彼は自身の陵墓を母の墓の近くに置くこと、そして４人の息子たちに領地を分割して相続させることを願い出て、それが許可されました。死後、「武王」と諡され、嫡男の司馬覲が後を継ぎました。

八王の乱と司馬伷の子孫たち

司馬伷自身は晋王朝に忠義を尽くしましたが、皮肉なことに、彼の子孫たちは「八王の乱」と呼ばれる内乱に関与し、晋王朝を混乱に陥れる一因となりました。

特に、司馬繇と司馬澹は乱の中で悲惨な最期を遂げました。司馬繇は司馬穎に殺害され、司馬澹は石勒の攻撃により命を落としました。しかし、司馬伷の孫である司馬睿は江南に逃れ、東晋を建国して皇帝に即位し、晋王朝の命脈を保ちました。

司馬伷の妻と子供たち

妻：諸葛太妃（諸葛誕の娘）
子供
司馬覲（琅邪恭王）
司馬澹（武陵壮王）
司馬繇（東安王）
司馬漼（淮陵元王）

司馬伷は、西晋の成立に大きく貢献した名将でありましたが、彼の子孫たちが引き起こした内乱は、西晋滅亡の遠因となりました。彼の生涯は、一族の繁栄と没落、そして時代の大きなうねりを象徴していると言えるでしょう。

[参考資料]

* 房玄齢等『晋書』巻38 琅邪王伷伝

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