PDS 70

PDS 70とは

PDS 70は、ケンタウルス座の方向に約370光[[年]]離れた場所に位置する、おうし座T型星に分類される若い恒星です。質量は太陽の0.76倍程度で、誕生から約540万年しか経過していません。変光星としても知られ、りゅう座BY型変光星に分類されています。PDS 70の最大の特徴は、その周囲に原始[[惑星]]系円盤が存在し、その中で惑星が形成されている様子が観測されていることです。

原始[[惑星]]系円盤

PDS 70の周囲には、半径約140天文単位に及ぶ原始[[惑星]]系円盤が存在しています。この円盤は1992[[年]]にその存在が仮説として提唱され、2006[[年]]にはジェットのような構造と共に確認されました。2012[[年]]には、円盤内に約65天文単位の大きな隙間が発見され、この隙間は惑星形成の兆候であると考えられました。その後、この隙間は単一ではなく複数の領域を持つことが判明しました。大きなダスト微粒子が存在しない領域は80天文単位まで広がっており、小さなダスト微粒子が存在しない領域は65天文単位まででした。また、隙間の形状は非対称であり、複数の惑星の存在が示唆されています。

惑星系

PDS 70系には、PDS 70 bとPDS 70 cという二つの惑星が存在します。

PDS 70 b

2018[[年]]に発見されたPDS 70 bは、超大型望遠鏡VLTによる直接観測で発見されました。質量は木星の数倍以上と推定される巨大な惑星で、表面温度は約1,000℃と高温です。大気には雲が存在する可能性も指摘されています。主星からの軌道長半径は約22.7天文単位で、約120年周期で公転しています。PDS 70 bの周囲には、惑星の形成過程で物質が降着する降着円盤が存在すると予測されており、2019[[年]]には観測的に確認されました。降着率は変動しており、最新の研究では年間 (1.4 ± 0.2)×10−8 木星質量と低いことが示唆されています。降着円盤の半径は3.0 ± 0.2 木星半径と大きく、放射温度は1,193 ± 20 K（920 ± 20 ℃）です。これまでの研究ではPDS 70 bの発光スペクトルは特徴がなく、分子種は検出されていません。

PDS 70 c

PDS 70 cは、2019[[年]]にVLTのMUSEによって発見されました。一つの惑星系において複数の惑星の存在が直接観測で明らかになったのは、HR 8799系に次いで2例目です。PDS 70 cはPDS 70 bよりも主星から遠く、約30.2天文単位離れた軌道を公転しています。これは太陽系における太陽から海王星までの距離とほぼ同じです。PDS 70 bとPDS 70 cは軌道共鳴に近い状態にあり、外側のPDS 70 cが1周する間に、内側のPDS 70 bがほぼ2周します。また、主星から約13.5天文単位の位置には、点状の光点「PLF」が確認されており、これが惑星である可能性も示唆されています。

周惑星円盤

2019[[年]]7月には、PDS 70 cの周囲に周惑星円盤の存在が確認されました。周惑星円盤は、惑星の衛星が形成される現場と考えられており、その観測は史上初です。周惑星円盤はPDS 70 cの周囲で発見され、PDS 70 bの近くには塵の塊が尾のような形状で繋がっている構造が見られます。2021年の研究では、PDS 70 cの周惑星円盤が周囲の原始[[惑星]]系円盤とはっきりと分離していることが明らかになり、その直径は約1.2天文単位で、月ほどの衛星を3つ形成できるほどの質量を持っていると推測されています。一方、PDS 70 bには周惑星円盤があるかは明確ではなく、PDS 70 cに物質を奪われている可能性も指摘されています。

まとめ

PDS 70系は、原始[[惑星]]系円盤、惑星、周惑星円盤が観測されている非常に珍しい星系であり、惑星形成の研究において重要な役割を果たしています。特に、PDS 70 bは直接観測された初の原始[[惑星]]として、その形成過程や特徴に大きな注目が集まっています。今後も、PDS 70系の観測によって、惑星形成に関する新たな知見が得られることが期待されます。

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