周波数分割多元接続

周波数分割多元接続（FDMA）とは

周波数分割多元接続（Frequency-Division Multiple Access、FDMA）は、無線通信における多元接続方式の一つです。この技術は、利用可能な電波の周波数帯を複数の帯域に分割し、各無線局に異なる周波数帯を割り当てることで、複数の局が同時に通信することを可能にします。各局は、割り当てられた周波数帯域のみを使用して通信を行うため、他の局との間で信号の干渉を避けることができます。

FDMAの基本的な仕組み

FDMAの基本的な仕組みは、利用可能な周波数帯を複数の小さな帯域（チャネル）に分割することです。各チャネルは、特定の無線局が通信に使用するために割り当てられます。これにより、複数の局が同時に異なる周波数で通信を行うことができ、効率的な周波数利用が実現されます。例えるならば、複数の人が別々の部屋で同時に話すようなもので、それぞれの声（周波数）が混ざり合うことなく、相手に届けることができます。

FDMAの割り当て方式

FDMAには、主に二つの割り当て方式があります。

1. 固定割当（PAMA: Pre-Assigned Multiple Access）：この方式では、各無線局に対して特定の周波数帯域が事前に固定的に割り当てられます。割り当てられた帯域は、その局が通信を行う間、常に使用できます。固定割当は、比較的単純な実装で済む一方、割り当てられた周波数帯域を常に占有してしまうため、利用効率が低い場合があります。

2. 要求割当（DAMA: Demand Assigned Multiple Access）：この方式では、必要に応じて動的に周波数帯域が割り当てられます。通信が必要な際に、制御機構を通じて周波数帯域が割り当てられ、通信が終了するとその帯域は解放されます。要求割当は、より効率的な周波数利用が可能ですが、制御機構が必要となるため、実装がやや複雑になります。COMSAT社が開発し、インテルサット衛星で採用されたシステムは、要求割当方式の初期の例です。統計的な割当処理を用いることで、全てのユーザーがトランスポンダの帯域に連続的にアクセスできるようにします。

FDMAの利点と欠点

利点

実装の容易さ：FDMAは、比較的簡単に実装できる技術です。基本的な原理が単純であるため、複雑な制御機構や処理を必要としません。

欠点

低いスペクトル効率：FDMAでは、異なる周波数帯域間の干渉を防ぐために、ガードバンドと呼ばれる未使用の周波数帯域を設ける必要があります。このため、利用可能な周波数帯域の一部が通信に使用されず、スペクトル効率が低くなる傾向があります。TDMA（時分割多元接続）やCDMA（符号分割多元接続）といった他の多元接続方式に比べると、スペクトル効率は劣ります。

FDMAの応用

FDMAは、初期の無線通信システムにおいて広く利用されてきました。特に、第一世代移動体通信システムでは、この方式が採用されていました。現在では、より高度な多元接続方式が主流となっていますが、FDMAは依然として一部の通信システムで利用されています。

他の多元接続方式との比較

TDMA (時分割多元接続)：TDMAは、時間軸を分割して複数の局が同じ周波数帯域を共有する方式です。FDMAと比較して、スペクトル効率が高い傾向があります。それぞれの局は決められた時間間隔で送受信を行います。
CDMA (符号分割多元接続)：CDMAは、複数の局が同じ周波数帯域を同時に使用しながら、それぞれ異なる符号を使って信号を区別する方式です。CDMAは、高いスペクトル効率と柔軟な利用が可能です。
OFDMA (直交周波数分割多元接続)：OFDMAは、FDMAの発展型で、周波数帯域をさらに細かく分割し、柔軟な割り当てを可能にする技術です。
WDMA (波長分割多重接続)：WDMAは、光ファイバー通信で使用される多重化技術で、異なる波長の光を使って複数の信号を同時に伝送する方式です。

まとめ

FDMAは、周波数帯域を分割することで複数の局が同時に通信できる、基本的な無線通信技術です。実装が比較的簡単である一方、スペクトル効率が低いという欠点があります。現在は他の多元接続方式が主流となっていますが、FDMAは無線通信技術の基礎を理解する上で重要な概念です。

参考資料

多元接続方式 (TDMA、FDMA、CDMA) - 曽田敏弘、慶應義塾大学
FDMA方式/TDMA方式 - NTTドコモ

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