周禎

周禎（しゅう てい）は、生没年不詳の元末明初の官僚であり、字を文典と称しました。本貫は建康府江寧県にあります。

生涯

元末の混乱期に、周禎は湖広に身を寄せていました。朱元璋が武昌を平定すると、その才能を認められ、江西行省僉事に任用されました。その後、大理寺卿に転じ、法曹官僚としてのキャリアを本格的にスタートさせます。

1367年、周禎は明朝の礎を築く重要な事業である律令の制定に携わることになります。李善長、劉基、陶安、滕毅らと共に、新たな国家の法体系を構築する中心的役割を担いました。特に、大理寺少卿の劉惟謙や大理寺丞の周湞と共に、詳細な律令を完成させた功績は特筆に値します。この律令は、明朝の統治基盤を支える重要な法典となりました。

1368年、明朝が成立すると、周禎は初代刑部尚書に任命されました。刑部尚書とは、刑罰や裁判を司る中央官庁の長であり、当時の社会秩序を維持する上で非常に重要な役職です。その後、治書侍御史に転じ、官僚の不正を監視し、綱紀を正す役割を担いました。

1369年、周禎は広東参政として地方に赴任します。当時の広東省は、省としての統治が始まったばかりであり、多くの官職が欠員状態でした。また、官吏に対する褒賞や懲戒の制度も十分に整っていなかったため、行政運営は困難を極めていました。そのような状況下で、周禎は香山県丞の沖敬が統治に尽力し、過労で職務中に亡くなったことを知り、弔文を作成してその功績を称えました。また、雷州府知府の余騏孫、恵州府知府の万迪、乳源知県の張安仁、清流知県の李鐸、掲陽県丞の許徳、廉州府知府の脱因、帰善知県の木寅らの優れた地方官の功績を上奏し、その働きを評価しました。これにより、広東省の官吏たちは職務に励むようになり、地方行政が安定に向かうきっかけを作りました。

1370年9月、周禎は中央に召還され、御史中丞に任命されました。御史中丞は、官僚を監察する役所である御史台の次官であり、周禎は中央においても引き続き不正を監視し、綱紀粛正に尽力しました。しかし、その後、病気のため官職を辞して引退することとなりました。

周禎の生涯は、元末明初という激動の時代において、官僚として国家の基礎を築く上で重要な役割を果たしたことを示しています。特に、律令の制定への貢献と、広東省における地方行政の安定化への尽力は、高く評価されるべきでしょう。彼の功績は、明朝初期の統治制度の確立に大きく貢献したと言えます。

参考文献

『明史』巻138 列伝第26

もう一度検索