劉基

劉基（りゅう き）

劉基は、14世紀に中国で活躍した軍人、政治家、詩人、軍師です。字は伯温（はくおん）、諡は文成（ぶんせい）。その卓越した才能で明の建国に大きく貢献し、後世に名を残しました。

生涯

劉基は、至大4年6月15日（1311年7月1日）に浙江省処州路青田県南田で生まれました。元末の科挙に合格し進士となりますが、上司と衝突して辞任し、故郷で隠棲生活を送ります。しかし、朱元璋が南京を陥落させ呉国公となると、その才能を見込まれて幕下に招聘され、軍師として活躍することになります。

朱元璋の軍師として、劉基は紅巾軍の首領であった韓林児を「牧童に過ぎない」と批判し、また、朱元璋が張士誠を先に討とうとした際には、陳友諒を先に討つべきだと進言しました。これらの進言により、朱元璋は劉基を深く信頼し、「我が子房（張良のこと）」と呼んだとされています。

明が成立すると、劉基は太史令から御史中丞となり、主に綱紀粛正に取り組みました。しかし、他の家臣からの讒言により、朱元璋の疑いを買い、退官して故郷へ引退します。その後、南京に滞在中に病にかかり、亡くなりました。

劉基の死後、胡惟庸が劉基を毒殺したとの疑惑がかけられ、これが胡惟庸の獄と呼ばれる大粛清のきっかけとなりました。

人物像と評価

劉基は、その卓越した軍事・政治手腕だけでなく、文筆家としても優れており、『郁離子』、『覆瓿集』、『写情集』などの著作を後世に残しています。中国では、三国時代の諸葛亮と並び称される軍師として、また予言者としても崇拝されており、小説や戯曲に数多く登場します。これらの作品では、字である「劉伯温」の名で親しまれることが多いです。

特に有名なのが、予言書とされる『焼餅歌』です。この書には、朱元璋が食べていた焼餅を当てた逸話や、明の将来を占ったとされる予言詩が記されています。現代においても、劉基は非常に人気があり、彼を題材としたテレビドラマやゲームなどが制作されています。

劉基は、西蜀の人士である趙天沢によって、諸葛孔明の同朋と評されており、その才能と功績が高く評価されていることが伺えます。また、『三国志演義』の赤壁の戦いの火計は、劉基が陳友諒を破った鄱陽湖の戦いを参考にされたという説もあり、演義の中の諸葛亮の人物像も劉基をモデルにしたとも言われています。劉基は、単なる歴史上の人物に留まらず、中国文化の中で特別な存在として人々に愛され続けています。

著作

『郁離子』十巻
『覆瓿集』二十四巻
『写情集』四巻
『犁眉公集』五巻（劉基没後、長男の劉璉が父の残した草稿を集成したもの）

伝説

劉基は、その並外れた知性と洞察力から、伝説的な存在としても語り継がれています。特に有名なのが、前述の『焼餅歌』に関する伝説です。朱元璋が焼餅を隠し、それを言い当てたという逸話は、彼の予知能力の高さを示すものとして伝えられています。

また、劉基は、その死後も、そのカリスマ性と神秘的なイメージから、さまざまな物語や伝説に登場し、人々の想像力を掻き立てています。彼の存在は、単なる歴史上の人物としてだけでなく、中国文化における重要なシンボルとして、後世に大きな影響を与え続けています。

まとめ

劉基は、軍師、政治家、文筆家としての才能に加え、予言者としても知られ、明の建国と安定に大きく貢献した人物です。その功績は歴史に刻まれ、現在でも多くの人々に敬愛されています。

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