命令航路

命令航路の概要

命令航路は、かつて日本において、国や地方自治体、また軍事機関からの支援を受けながら運営されていた航路のことを指します。この制度は、特定の運航とその維持が命じられるもので、日本の海運業を振興し、内外貿易を活発化させる目的がありました。特に明治初頭においては、外国船に依存する状況から脱却し、自国の海運を確立するための重要な施策でした。

歴史的背景

日本の命令航路は、1876年に最初に設けられました。この時、運航が命じられたのは新潟−佐渡、長崎−釜山、横浜−上海の3つの路線です。これにより、日本は国が関与する海運会社を通じて、自国の航海自主権を確立しようとしました。また、内国交易においても、和船が主流でしたが、国が直接関与することで物流の拡大を図ったのです。

命令航路の運航に際しては、運航期間や便数、艘数、船齢が厳格に規定されていました。具体的には、開設命令を受けることで自由航路として運航し、同時に国や地方自治体からの補助的な資金を受け取る「補助航路」という別の制度も存在しました。各運航会社の中では、日本郵船と大阪商船が特に有名であり、命令航路の運営を通じて業績を大きく伸ばしました。

運航管理機関

命令航路の運航管理を行っていたのは、主に逓信省でしたが、地方自治体や外地の統治機関、例えば朝鮮総督府や台湾総督府、大日本帝国陸軍及び海軍も運航命令を出していました。その中で、国策として位置づけられたため、鉄道省などの関連機関との連携が多く見られました。例えば、主要港に「駅」を設置し、荷物の取扱いを便利にするなどの工夫もなされました。

航路の変遷

時代が進むにつれ、鉄道の敷設や道路の整備が進むと、内航の命令航路の多くは自由航路に移行しました。この結果、命令航路が廃止される例も多くなりました。また、厳格に定められた寄港地や船賃により競争が難しくなる中で、自由航路への移行を余儀なくされる運航会社も増加しました。例えば、競合他社との不利な競争があったために、命令航路から自由航路へと転身したケースも多々ありました。

外航の命令航路

大正中期以降、外航においても新たな命令航路が開設されることが続きました。特に海外の交通便を向上させるための移行施策が求められ、戦前まで命令航路の設置が行われていきました。現在、命令航路に関する法令は存在しませんが、離島航路整備法によって航路維持のための助成措置が定められています。

主な命令航路

命令航路としては、日本郵船や大阪商船の運航する国際的な路線が存在しました。
例えば、横浜−ロンドンや、神戸−ケープタウン、さらには横浜−ニューヨークなど、さまざまな国際航路があったのです。また、台湾や南洋群島、樺太に至るまでの路線も含まれています。

このように、命令航路は日本における海運業の発展に大きな役割を果たしましたが、交通手段の発展や需要の変化に伴い、次第にその役割を終えていきました。当時の命令航路の運営は、日本の国際的な地位を強化するための重要な手段の一つでした。

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