和田万吉

和田万吉：日本の図書館学の礎を築いた学者

和田万吉（1865年10月7日-1934年11月21日）は、明治から昭和初期にかけて活躍した国文学者、図書館学者、そして書誌学者です。彼は、日本の図書館学の基礎を築いた人物として、今沢慈海とともに高く評価されています。

早期の人生と東京帝国大学での活躍

美濃国大垣藩士の家に生まれた和田は、1890年に東京帝国大学国文科を卒業後、同大学の付属図書館に奉職しました。その後、学習院教授を兼任するなど、若くして才能を開花させます。1896年には東京帝国大学助教授兼附属図書館司書官となり、翌年には図書館長に就任。実に27年間にわたって東京帝国大学図書館長を務め、その発展に大きく貢献しました。

図書館学への貢献と国文学研究

1910年には欧米に留学し、先進国の図書館事情を研究。帰国後、日本で最初の図書館学の講義を開講しました。さらに、日本文庫協会（後の日本図書館協会）や文部省図書館員教習所の設立にも携わるなど、日本の図書館制度の確立に尽力しました。

国文学の分野でも、古版本や出版史に関する研究、近世文学作品の本文校訂など、多くの業績を残しています。特に、謡曲や曲亭馬琴に関する研究は高く評価されています。彼の研究は、日本の文学史解明に大きく貢献しました。1918年には東京帝国大学教授に昇進、1920年には文学博士の学位を授与されています。

関東大震災とその後

1923年の関東大震災では、東京帝国大学附属図書館が被災し、多くの貴重な蔵書が焼失するという悲劇に見舞われました。和田は、その責任を取り、図書館長を辞任するという決断を下します。この出来事は、彼の深い責任感と図書館への強い愛着を物語っています。

退官後も、法政大学や東洋大学などで講師を務め、後進の育成に尽力しました。彼の生涯は、日本の学問と文化の発展に大きく貢献した、揺るぎない信念を持った学者像を示しています。

家族と栄典

和田万吉は、東京帝国大学総長を務めた松井直吉を兄に持ち、娘婿は政治学者で参議院議員となった佐々弘雄です。外孫には佐々克明、佐々淳行らがいます。1908年には勲六等瑞宝章を受章しています。

まとめ

和田万吉は、日本の図書館学を確立し、国文学研究にも多大な貢献をした、重要な人物です。彼の功績は、今日でも高く評価されており、日本の学問・文化の発展に大きな足跡を残しました。関東大震災による図書館焼失という困難にも直面しましたが、責任を負い辞任する彼の行動は、誠実さと責任感の象徴と言えるでしょう。彼の生涯は、私たちに多くの示唆を与えてくれます。

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