和田敦彦

和田敦彦：近代日本の読書文化と出版史を解き明かす研究者

和田敦彦氏は、1965年8月生まれの日本の近代文学研究者であり、早稲田大学教授として活躍されています。高知県出身の和田氏は、早稲田大学大学院文学研究科博士課程を単位取得退学後、信州大学人文学部助教授、コロンビア大学客員研究員などを経て、2008年に早稲田大学教授に就任しました。

専門分野と研究活動

和田氏の専門は日本近代文学です。特に、読書論、出版文化史、メディア史といった観点から、近代日本の読書文化や出版環境を多角的に研究されています。その研究は、単なる文学作品分析にとどまらず、社会史、文化史、メディア史といった隣接領域にも広がり、近代日本社会の文化的基盤を深く探求しています。

受賞歴と代表的な著作

和田氏は、2007年に発表した『書物の日米関係』（新曜社）で、日本図書館情報学会賞、日本出版学会賞、ゲスナー賞を受賞しています。これは、日米間の書物流通や読書文化の比較研究を通して、近代における情報伝達と知識構築のあり方を探った重要な成果です。

氏の主な著作には、読書論を体系的に論じた『読むということ：テクストと読書の理論から』（ひつじ書房）、メディアと読書の関係性を分析した『メディアの中の読者：読書論の現在』（ひつじ書房）、近代日本の読書環境の変容を捉えた『越境する書物：変容する書物環境の中で』（新曜社）、そして日本の近代における読書の歴史を俯瞰した『読書の歴史を問う：書物と読者の近代』（笠間書院、改訂増補版は文学通信）などがあります。これらの著書は、近代日本の読書文化を理解する上で必読の書として高く評価されています。さらに、2022年には『「大東亜」の読書編成：思想戦と日本語書物の流通』（ひつじ書房）を上梓し、戦時下の出版統制と読書文化の実態を明らかにしました。

編著書においても、『読書論・読者論の地平』、『国定教科書はいかに売られたか：近代出版流通の形成』、『職業作家の生活と出版環境：日記資料から研究方法を拓く』など、近代日本の出版文化や作家の生活実態に迫る研究を世に送り出しています。これらの研究は、日本の出版史研究に新たな視点を提供し、学界に大きな影響を与えました。

和田敦彦氏の研究の意義

和田氏の研究は、単に文学作品を分析するにとどまらず、読書行為や出版環境といった周辺領域にも光を当て、近代日本社会の文化形成過程を多角的に解明しようとしています。そのため、文学研究者だけでなく、社会史研究者、メディア研究者など、幅広い分野の研究者から高い評価を得ています。その研究成果は、近代日本の文化理解を深める上で重要な役割を果たしており、今後も日本の近代文学研究、ひいては日本の文化研究に大きな貢献を続けることが期待されます。彼の研究は、私たちが日頃何気なく行っている読書行為を改めて深く考えさせ、近代日本の社会構造や文化の理解を深めるための重要な手がかりを与えてくれます。

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