和田漁港

和田漁港の概要

和田漁港（わだぎょこう）は、千葉県南房総市東部に所在する第2種漁港です。この漁港は、南房総国定公園の一部にあたり、沖合には豊かな漁場が広がることで知られています。主に沿岸漁業と沖合漁業が盛んに行われており、特にツチクジラの捕鯨基地として有名です。2021年時点では、関東地方で唯一の捕鯨基地となっています。

基本情報

和田漁港は、千葉県に属し、管理は千葉県農林水産部水産局が行っています。漁業協同組合は東安房漁業協同組合（和田支所）で、2017年3月時点での組合員数は365人（そのうち正組合員59人）。漁港番号は1920080です。

漁業の歴史と発展

この漁港の歴史は長く、1920年に県によって修築され、その後1948年には捕鯨拠点として設けられました。1952年には第2種漁港に指定され、沿岸漁業と磯根漁業を支える重要な役割を果たしてきました。

主な水揚げ魚種

和田漁港では、2015年と2016年のデータに基づき、サバやイワシ、アジなどの定置網漁業が多く水揚げされています。また、イセエビやアワビといった高価な魚種も金額ベースで重要な品目です。特に、関東唯一の沿岸捕鯨基地として、毎年26頭のツチクジラ（一部マゴンドウ）を水揚げしています。

捕鯨の伝統

江戸時代から続くツチクジラ漁は、安房地方で行われ、勝山や館山などを経て、現在は和田漁港だけで実施されています。ツチクジラは深く潜水する特性を持ち、捕鯨技術も進化してきました。捕鯨が始まった当初は人力での突取り漁が行われ、明治期以降は銃を用いる方法に変わりました。江戸時代には、鯨油が江戸周辺で流通し、鯨肉は地元で消費されていました。また、近代には総じて骨粉が肥料として利用されていましたが、製造過程による匂いの問題で生産が停止しています。

1949年から操業を始めた外房捕鯨株式会社は、宮城県の捕鯨地域である鮎川との関係が深く、昭和40年代以降は捕獲や解体作業の中心が鮎川出身者によって担われています。和田浦のツチクジラ漁の様子は、1998年のドキュメンタリー映画『鯨捕りの海』として記録されています。

捕獲されたツチクジラは、解体までの間に漁港内で12時間から18時間係留され、肉や脂肪の熟成が図られます。解体の主な用途は干し肉製造であり、生食として消費されるわけではありません。このため、捕獲状況や解体の予定がインターネットで公開されており、観光客や地元住民が見学できる機会も設けられています。

参考文献

• - 南房総市外房漁村再生計画 (pdf). 南房総市, 2018年3月.
• - 小島孝夫 編『クジラと日本人の物語 : 沿岸捕鯨再考』東京書店, 2009年.
• - 小島孝夫「捕鯨文化における伝統 : 千葉県安房地方の鯨食文化を事例に」『日本常民文化紀要』第24巻, 成城大学, 2004年.
• - 石川創「日本の小型捕鯨業の歴史と現状」『国立民族学博物館調査報告』第149巻, 国立民族学博物館, 2019年.
• - 和泉節夫、和泉諄子「鯨はすべてでした」『鯨を生きる : 鯨人 (くじらびと) の個人史・鯨食の同時代史』吉川弘文館, 2017年.

関連項目

• - 日本の漁港一覧#千葉県
• - 日本の捕鯨

和田漁港は、その独自の文化や歴史を知るための貴重なスポットです。

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