和蝋燭

和蝋燭（わろうそく）とは

和蝋燭は、日本の伝統的な灯火具であり、植物性の木蝋を主な原料とする蝋燭です。ハゼの木の実から採取される木蝋を、和紙と灯芯草で作られた芯に塗り重ねて作られます。その製法と材料において、西洋の蝋燭（洋蝋燭）とは大きく異なります。

原料と製法

洋蝋燭

洋蝋燭は、蜜蝋や動物性油脂、パラフィンなどを原料とし、型に流し込んで成形されます。芯には綿糸が用いられるのが一般的です。

和蝋燭

和蝋燭は、ハゼノキから採れる木蝋を主原料とし、芯には和紙と灯芯草を使用します。木蝋を芯に手で塗り重ねて乾燥させるという、手間暇のかかる製法で作られています。この製法により、独特の質感と風合いが生まれます。

ただし、近年では、伝統的な製法だけでなく、型に流し込む製法で作られた和蝋燭も多く見られます。また、植物性以外の原料を使用した和蝋燭も存在します。

灯火の特徴

和蝋燭は、芯が空洞構造になっているため、燃焼時に炎が揺らめくのが特徴です。この揺らぎは、空気が芯の中を流れることで生じます。また、炎の温度は洋蝋燭よりも低いものの、炎の体積が大きいため、照度は2～3倍明るいと言われています。

さらに、和蝋燭は風に強く、蝋垂れや油煙が少ないという利点があります。これは、芯が蝋を吸い上げるスピードが速いためです。しかし、芯が太い和蝋燭では、芯が燃え残ることがあります。その際は「芯切り」という作業で炭化した芯を取り除く必要があります。

和蝋燭の種類

白蝋燭と朱蝋燭

和蝋燭には、緑がかった白蝋燭と、朱色の顔料を塗った朱蝋燭があります。朱蝋燭は、白蝋燭に朱色の染料を混ぜた木蝋を塗ることで作られます。

絵蝋燭

和蝋燭の側面には、絵が描かれることがあります。これは、仏壇に供える花が枯れても、蝋燭の絵で代用できるという意味合いがあります。福島県の会津地方では、この絵蝋燭が伝統工芸品として指定されています。

歴史

和蝋燭の歴史は古く、1375年頃の『太平記』に記述が見られます。江戸時代には、広島藩などで生産が盛んになりました。現在では、各地で伝統的な製法を受け継ぎ、和蝋燭が作られています。

主な産地

和蝋燭は、以下の地域で生産されています。

山形県：鶴岡市、酒田市
福島県：会津若松市
新潟県：新潟市
石川県：七尾市
滋賀県：高島市
福井県：福井市
愛知県：岡崎市
兵庫県：西宮市
京都府：京都市
愛媛県：内子町
埼玉県：川越市
岐阜県：高山・飛騨
愛知県：名古屋市
熊本県：熊本市
* 長崎県：島原市

これらの地域では、それぞれの土地の風土や文化に根ざした和蝋燭が作られています。

近年の動向

2016年には、伊勢志摩サミットで、各国首脳への贈答品として、カキツバタの絵が描かれた和蝋燭が贈られました。このことは、和蝋燭の美しさと伝統が、国際的にも認められていることを示しています。

和蝋燭は、その製造に手間と時間がかかるため、高価なものですが、その美しい灯りと独特の風合いは、多くの人々を魅了し続けています。

まとめ

和蝋燭は、日本の伝統的な灯火具であり、植物性の木蝋を原料とする蝋燭です。その製法や灯りの特徴、歴史、産地など、多くの魅力があります。洋蝋燭とは異なる独特の美しさを持ち、現代においても、その価値は高く評価されています。1398文字

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