和製キング・コング

和製キング・コング (1933年の映画)

『和製キング・コング』は、松竹キネマが制作・配給し、1933年10月5日に公開された短編喜劇映画です。斎藤寅次郎が監督を務め、蒲田撮影所で制作された白黒の無声映画であり、同時上映は『放浪の名君』でした。

あらすじ

幸一と友人はその日暮らしの生活を送るルンペン。ある日、砂浜で小銭を拾っていると、友人にはお光という恋人がいるものの、彼女の父親が2人の仲を認めず、他の男性との結婚を強いるという状況を知ります。

友人は一攫千金を夢見て浅草を歩き回るうち、映画館で大人気の米国映画『キング・コング』に目を奪われます。彼は見世物興行師に「和製キング・コング」を企画を持ち込みます。着ぐるみを着てキングコングになりきり、見世物は大繁盛。

しかし、舞台中にお光が父親に連れられた見合い相手と観客席にいるのを見つけた彼は、我を忘れて舞台から飛び降り、お光を追いかけます。突如現れたキングコングに町は大混乱。騒動の末、彼はついに、お光とその見合い相手を捕まえ、恋敵をキングコングに仕立て上げて縛り上げます。

そこへ興行師が稼いだお金を届け、大金を手にした彼は、お光との恋を成就させるのでした。

解説

本作は、1933年に全世界で公開され大評判となったRKO社の特撮怪獣映画『キング・コング』に便乗した企画として制作されました。RKO日本社と千鳥興業が日本配給権を争う中、松竹キネマが映画化に成功したのです。

喜劇に定評のあった斎藤寅次郎が監督を務め、全編ドタバタのナンセンスな短編喜劇（20分弱）として、『放浪の名君』の添え物として公開されました。

山口勇が演じる「和製キング・コング」に扮する男には劇中の役名がありません。彼が「和製キング・コング」になると怪力を発揮する点について、劇中での説明はありません。

斎藤監督の映画では、追っかけの場面で青年団や古武者姿の親父が登場するのがお決まりですが、本作にも同様の演出が見られます。

当時の映画評論家、北川冬彦は本作を「構成が巧妙で、斎藤流の人物たちがよく演じている」と評価し、「見れば誰もが笑う佳作」と評しました。

残念ながら、フィルム原版は紛失したものとみられています。

キャスト

キング・コング：山口勇
お光：小泉泰子
清造：関口小太郎
幸一：山田長正
横島：坂本武

スタッフ

監督：斎藤寅次郎
原作・脚色：伏見晁
撮影：武富善男

参考文献

* 『季刊映画宝庫 キングコング』（芳賀書店、1977年）「再録 キングコング全作品」

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