山口勇

山口勇：映画界を彩った名脇役の生涯

山口勇（やまぐち いさむ、1904年3月4日 - 1982年）は、昭和期の日本映画界で活躍した俳優です。本名も同じく山口勇。成瀬巳喜男監督の現存する最古の監督作品『腰辨頑張れ』で主演を務めたことで知られ、戦後も東映京都撮影所の脇役として数多くの作品に出演しました。

生い立ちと映画界入り

1904年（明治37年）3月4日、東京府東京市麻布区麻生竹谷町（現在の東京都港区南麻布）に生まれました。作家の小林信彦は、山口の従甥にあたります。麻布区内の東京市立南山尋常小学校（現在の港区立南山小学校）、旧制高輪中学校（現在の高輪高等学校）を経て、明治大学法科に進学しますが、関東大震災の影響で1924年（大正13年）に中途退学します。

大学中退後は、父親が経営する無線通信器具工場に勤務し、後にその経営を引き継ぎます。しかし、26歳になった1930年（昭和5年）3月、工場の経営権を弟に譲り、松竹蒲田撮影所に入社。同年12月31日公開の『大学の顔役・ラクビー篇』で映画デビューを果たしました。

主演から脇役へ

1931年（昭和6年）、成瀬巳喜男監督の『腰辨頑張れ』で初の主演を務めます。しかし同年9月には、松竹を退社し、不二映画社に参加。その後、日本映画、そして松竹蒲田撮影所へと復帰します。この時期には清水宏監督の『旅寝の夢』や斎藤寅次郎監督の『和製キング・コング』など、主演作品も多くありました。

1935年（昭和10年）には、東京発声映画製作所の設立に参加しますが、1938年（昭和13年）には新興キネマへ移籍、現代劇を中心に活躍しました。1942年（昭和17年）には大映に合流し、大映京都撮影所に所属。戦後は大映東京撮影所を中心に活動しましたが、松竹京都撮影所や東映作品にも多く出演しました。

東映での活躍と晩年

1951年（昭和26年）の東映設立以降は、東映京都撮影所を中心に、時代劇や現代劇の脇役として数多くの作品に出演しました。1964年（昭和39年）まで出演記録が確認でき、1979年（昭和54年）には存命が確認されています。その後、芸能界を引退し、東京で鰻屋を経営していましたが、1982年（昭和57年）に77歳で亡くなりました。

フィルモグラフィー

山口勇は、数多くの作品に出演しており、そのフィルモグラフィーは多岐にわたります。以下に主な出演作品を掲載します。

松竹蒲田撮影所

『大学の顔役・ラクビー篇』（1930年）
『腰辨頑張れ』（1931年）
『東京の合唱』（1931年）

不二映画社

『栄冠涙あり』（1931年）
『熊の出る開墾地』（1932年）
『アメリカ航路』（1932年）

日本映画

『上海から来た女』（1933年）

松竹蒲田撮影所

『旅寝の夢』（1933年）
『和製キング・コング』（1933年）
『ぬき足さし足』（1934年）

東京発声映画製作所

『乾杯! 学生諸君』（1935年）
『若い人』（1937年）
『泣蟲小僧』（1938年）

新興キネマ東京撮影所

『応援歌』（1938年）
『あゝ故郷』（1938年）
『真人間』（1940年）
『新生の歌』（1941年）
『戸田家の兄妹』（1941年）
『北極光』（1941年）

大映京都撮影所

『新雪』（1942年）
『無法松の一生』（1943年）

大映東京撮影所

『犯罪者は誰か』（1945年）
『街の人気者』（1946年）
『静かなる決闘』（1949年）

東映京都撮影所

『赤穂城』（1952年）
『雪之丞変化』（1954年）
『忍術児雷也 逆襲大蛇丸』（1955年）
『赤穂浪士 天の巻・地の巻』（1956年）
『喧嘩道中』（1957年）
『おしどり駕篭』（1958年）
『源氏九郎颯爽記 白狐二刀流』（1958年）
『ひばり捕物帖 かんざし小判』（1958年）
* 『ギャング対Gメン』（1962年）

まとめ

山口勇は、その長いキャリアの中で、数々の映画作品を彩ってきた名脇役でした。初期の主演作から、戦後の脇役としての活躍まで、その幅広い演技力と存在感は、多くの映画ファンを魅了しました。彼の生涯は、日本映画史の一つの側面を映し出す鏡と言えるでしょう。

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