品川寺

品川寺（ほんせんじ）

品川寺は、東京都品川区南品川に位置する真言宗醍醐派の寺院です。海照山と号し、水月観音と聖観音を本尊としています。江戸三十三観音札所の第31番札所としても知られています。

歴史

寺伝によれば、品川寺は弘法大師空海によって大同年間（806年～810年）に開かれたとされています。その後、長禄元年（1457年）に太田道灌が伽藍を建立し、金華山大円寺と称しました。戦乱で一時荒廃しましたが、承応元年（1652年）に弘尊上人によって再興され、現在の寺号である品川寺となりました。

品川寺は、数々の文化財を有することで知られています。中でも、スイス・ジュネーヴ市との深い縁を持つ梵鐘や、江戸六地蔵の第一番にあたる地蔵菩薩像、東海七福神の毘沙門天は、訪れる人々を魅了しています。

梵鐘を巡る物語

明暦3年（1657年）に鋳造された梵鐘は、徳川幕府第四代将軍徳川家綱によって寄進されたと伝えられています。鐘身には六観音像が鋳出されています。この梵鐘は幕末に海外へ流出し、パリ万博（1867年）やウィーン万博（1873年）に出展された後、所在不明となっていました。

大正8年（1919年）、文部省学芸部長の石丸優三が、ジュネーヴ市のアリアナ美術館に所蔵されていることを発見しました。石丸からの連絡を受けた当時の住職・仲田順海は、梵鐘の返還交渉を開始。外務大臣・幣原喜重郎をはじめとする多くの人々の尽力により、ジュネーヴ市議会は日本への返還を決定し、昭和5年（1930年）に品川寺へ返還されました。この際、返礼として品川寺からアリアナ美術館へ石灯籠が贈られています。

梵鐘の返還をきっかけとした交流は戦後も続き、昭和39年（1964年）の東京オリンピックでは、仲田順海の招待によりスイス選手団の歓迎パーティーが開催されました。さらに、平成3年（1991年）には品川寺からジュネーヴ市へ新しい梵鐘が贈られ、同年9月には品川区とジュネーヴ市が友好都市提携を結びました。

文化財

品川寺には、以下の文化財があります。

重要文化財（国指定）
絹本著色仏眼曼荼羅図：鎌倉時代の作。現在は東京国立博物館に寄託されています。
重要美術品
梵鐘：前述の通り、数奇な運命を辿った梵鐘です。
東京都指定有形文化財（彫刻）
銅造地蔵菩薩坐像：宝永5年（1708年）に造られた江戸六地蔵の第一番。現存する江戸六地蔵像の中で唯一、頭上に傘を載せていません。
品川区指定天然記念物
品川寺のイチョウ：山門脇にそびえ立つ、推定樹齢600年の大木です。

アクセス

* 京浜急行線 青物横丁駅より徒歩4分

品川寺は、歴史と文化が息づく、地域の人々に愛される寺院です。ぜひ一度、足を運んでみてはいかがでしょうか。

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