唐牛健太郎

唐牛健太郎：激動の時代を生きた学生運動家

唐牛健太郎（1937年～1984年）は、1960年安保闘争で名を馳せた学生運動家です。北海道函館市出身。幼少期に父を亡くし、母子家庭で育ちました。北海道大学に入学するも、砂川闘争に参加するため上京、その後は印刷工場勤務などを経て大学に復学。シナリオ研究会に所属し、のちに著名な脚本家となる保阪正康氏と同時期に活動していた記録も残っています。

大学では自治会委員長に選出され、日本共産党に入党。全学連中央執行委員に選ばれましたが、後にブント（共産主義者同盟）へ参加します。

ブント、全学連委員長時代、そして逮捕

1959年、ブント書記長・島成郎氏の説得を受け、唐牛は22歳で全学連中央執行委員長に就任。就任早々、防衛庁長官の「東大に造兵学科設置」発言への抗議デモを指揮し、公務執行妨害で逮捕。その後も安保闘争関連で度々逮捕され、北海道大学を除籍されました。1960年安保闘争の最中、樺美智子さんの死を獄中で知ることとなりました。

革共同加盟と政治活動からの引退

1961年、唐牛は革共同（革命的共産主義者同盟全国委員会）に加盟。しかし、全学連委員長を辞任し、国際部長に降格。その後、ブントと革共同の野合を企てるも失敗、政治活動から身を引きます。田中清玄氏経営の石油販売会社に就職し、穏やかな生活を送るかに思われました。

しかし、TBSラジオのドキュメンタリー番組で、全学連への田中氏からの資金援助が暴露され、大きな波紋を呼びました。この番組の信憑性については、のちに異論も出されています。唐牛は安保闘争関連の裁判で有罪判決を受け、収監されました。

実業家として、そして漁師へ

出所後、唐牛は実業家の道を歩みます。ヨット会社「堀江マリン」を設立し、ヨットスクールを運営。居酒屋経営やバッティングセンター経営なども行いました。しかし、ヨットスクール経営に飽き足らず、離婚して失踪。四国八十八ヶ所巡礼を経て、与論島へ渡ります。

1970年には北海道に戻り、厚岸で漁師見習いを始め、後に紋別でトド猟師として約10年間生活しました。しかし、ソ連の200海里宣言の影響で漁師を廃業。母の看病のため函館に戻りますが、母を亡くしたのち再び上京します。

晩年と死

1981年、千葉県市川市に移住し、オフィスコンピュータ販売会社でトップセールスマンとして活躍。旧知の島成郎氏を通じて徳田虎雄氏（徳洲会創業者）と出会い、徳洲会病院の設立に協力しました。札幌、羽生市の病院建設に尽力。徳田氏の選挙運動にも参加しましたが、直腸がんを発覚。闘病生活の後、1984年3月4日、47歳で死去しました。葬儀には多くの弔問客が訪れました。

唐牛健太郎像

唐牛健太郎は、激しい時代を生き抜き、様々な職業を転々とした人物でした。学生運動家として、実業家として、そして漁師として。彼の生き様は、激動の昭和時代を象徴するものであり、現代においても多くの示唆を与えてくれるでしょう。彼の行動は常に一貫性を欠いていたように見えますが、その裏には、常に正義感と強い信念が貫かれていたと言えるでしょう。

彼の生涯は、評伝『唐牛伝　敗者の戦後漂流』（佐野眞一著）や『唐牛健太郎追想集』などに詳しく記されています。これらの文献を通して、唐牛健太郎という複雑で魅力的な人物像をより深く理解することができるでしょう。また、西部邁氏の著作『六〇年安保―センチメンタル・ジャーニー』にも唐牛健太郎に関する記述があります。

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