砂川闘争

砂川闘争：基地拡張反対運動と日米関係の激動

1955年から1960年代初頭にかけて、東京都立川市（当時、北多摩郡砂川町）を舞台に、在日米軍立川基地の拡張計画に反対する住民運動が展開されました。この運動は「砂川闘争」として知られ、日本の戦後社会における重要な出来事の一つとなっています。

発端と住民の抵抗

1955年、米軍は日本政府に対し、立川基地を含む複数の飛行場拡張を要求しました。この計画は、砂川町の住民に大きな衝撃を与えました。拡張予定地には、多くの住民の生活や生業がかかっており、計画への反対運動が、町をあげて組織的に展開されていきました。

砂川基地拡張反対同盟が結成され、住民たちは基地拡張阻止に向けた闘争を開始。町議会も反対決議を採択し、全議員が運動に参加するなど、町全体が一体となって抵抗を続けました。労働組合や左派政党も運動を支援し、大規模なデモや抗議活動が展開されました。

流血の衝突と測量阻止闘争

基地拡張のための測量が始まると、住民と警官隊との間で激しい衝突が発生しました。1956年10月には、農民と警官隊の衝突で多数の負傷者が出る「流血の砂川」と呼ばれる事態に発展。激しい抵抗活動は、政府に測量中止を決定させる結果に繋がりました。

砂川事件と最高裁判決

しかし、米軍による強制測量はその後も継続されました。測量阻止活動に参加した人々に対する逮捕・起訴が相次ぎ、「砂川事件」へと発展。この事件は、日米安全保障条約に基づく刑事特別法違反の適用を巡り、激しい議論を呼びました。

一審では無罪判決が下されましたが、上告審である最高裁判所は「統治行為論」を適用し、判決を破棄。最終的には有罪判決が確定しました。この裁判は、日米関係や日本の司法制度を巡る議論を深化させました。近年、判決の早期破棄を目的とした日米両政府間の秘密協議の存在が明らかになり、裁判の背景に新たな光が当てられています。

基地拡張計画の中止と跡地返還

激しい住民運動と、日米両政府間の政治的駆け引きが続く中、米軍は1968年12月に滑走路延長計画を撤回。翌年には、横田基地への機能移転が発表されました。そして、1977年には立川基地の跡地が日本に返還されました。

砂川闘争の意義と影響

砂川闘争は、戦後の日本社会において、米軍基地問題、日米関係、憲法解釈、そして民主主義と社会運動のあり方について、多くの議論を巻き起こしました。多くの社会運動家や作家が運動に参加、支援し、その活動は後の反戦・反基地運動にも大きな影響を与えました。

また、砂川闘争は、三里塚闘争など、後の反基地運動の先駆けとしての役割を果たしました。参加者や支援者たちのネットワーク、経験、そして闘争の精神は、後の反基地運動へと受け継がれて行きました。砂川闘争は、単なる基地反対運動にとどまらず、日本の社会運動史、そして日米関係史において、重要な位置を占める出来事と言えます。

関連書籍・映画

砂川闘争に関する書籍や映画は数多く制作されており、多角的な視点から運動の記録や分析がなされています。これらの資料は、当時の状況や関係者の思いを知る上で貴重な情報源となっています。現在でも、砂川闘争の記憶と教訓を伝える取り組みが続けられています。

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